V-IZU TCM1 & TCM2
2023年8月に開催されたトラック世界選手権。一部の日本代表選手(佐藤水菜選手と内野艶和選手)が使用したトラックバイクがスクープされ話題になりました。
独特な形状のフロントフォークとシートステーで下肢(乗員の下半身側)の空気抵抗を整流していると思われる。
バイク単体では無くて乗員込みでのトータルで空気抵抗を減らす設計と思われます。
LOTUS HOPEはこのフロントフォークやシートステー形状に依る整流で、空気抵抗を3%減らせると言っています。
パイオニアのLOTUS HOPEが更なる改良を重ねた新型車両を投入。LOOK P24、CANYON Speedmax CFR Track、BMC、そして日本代表チームが2023トラック世界選手権で投入したV-IZUは過去記事にまとめました。
メディアの取材にもノーコメント。謎に包まれていたV-IZUですが、市販化に伴い情報が出てきたのでまとめてみました。
※『競技日程上に於いて、市販化され市場で入手可能でなければならない』というUCI認証機材の競技規則があります。
謎のベールに包まれていたV-IZUが情報公開
ハンドルバーの形状からして、TCM1が短距離用、TCM2が中長距離用でしょう。
S,M,Lのサイズ表記のみでジオメトリーは公表されていません。
ドライブトレイン(チェーンリング、チェーン、スプロケット)がFELT TA FRD同様に左側にあるのも特徴。
バンクを低速で上がることもあるスプリント種目でのグランドクリアランスの確保。
そして、どの程度の効果があるのかは不明ですが、構造物をバンクの内周側に配置することで空気抵抗を減らす効果を狙っているようです。
TCM1が完成車価格17,300,000円(税抜)!!TCM2が19,850,000円(税抜)!!
消費税10%分でハイエンドロードが買えてしまう驚きの価格!!
株式会社SYNergy(シナジー)という会社が販売するらしい。
代表者名がチームブリヂストンサイクリング2022~2023の現監督と同姓同名。
LOTAS HOPEにそっくりな形状のフトントフォークですが、LOTUS HOPEやLOOK P24に無い工夫がされています。
薄い板状(翼断面かも)のフロントフォークは上側方向に従って外側にカーブした形状になっている。
整流効果を狙っていると思われるリブも設けられており、バイク前面に当たった空気の流れをライダーよりも外に逃がす効果を狙っている。
東レ・カーボンマジック株式会社
前身は童夢カーボンマジック。2013年4月に東レが全株式を取得し東レ・カーボンマジック株式会社に社名変更されています。
モータースポーツ界隈には疎くて「童夢」の名前を知っている程度だったのですが、公益財団法人JKAや競輪補助事業とも関連体制にあります。
競輪補助事業として、東レ・カーボンマジックは2022年度と2023年度にそれぞれ1億3,500万円ずつの振興事業補助金の交付受けています。
ブリヂストンサイクルへの交付金よりもずっと多い・・・。
試作や風洞実験、そして製造は東レ・カーボンマジックなのではないかと推測して検索していたら・・・公式ニュースを発見。
公益財団法人JKA補助事業 世界一のトラックバイク開発を目指して|東レ・カーボンマジック
東レ・カーボンマジックは、公益財団法人JKAからの補助を受け、世界一を目指すトラックバイクを開発しております。このトラックバイクは、当社がレーシングカー開発や航空・宇宙関連開発の分野で培ってきた技術やノウハウを活用し、自由な発想のもとに設計・製作され、8月のデビューを目指しています。
https://www.carbonmagic.com/news/news_20230628.html
川﨑宗則さんが競輪とオートレースのJKA補助事業PR大使として、補助先の東レ・カーボンマジックを訪問!
YouTube動画ではフレーム&フォークにロゴが入っています。
動画内で映っているのはV-IZU TCM1。「さらに空気抵抗の少ないバイクを開発中」と語られているのがV-IZU TCM2のこと。
半年前に公開されている動画なのに僕が閲覧した時点で再生回数498回。
知られていない訳だ・・・。野球界に留まらないメジャーリーグ経験者、有名人の川崎宗則選手が広報を務めているのに、たったの498回再生とは・・・。
まとめ
東レ・カーボンマジックは東レの100%子会社。材料となるカーボン繊維の入手難に陥ることもないでしょう。
トラックバイクの制作は初めてとは言え、カーボン製品の制作はお手のものでしょうし。
UCIの車両規定=車両重量6.8kg以上の要件を満たすため、ロードバイクのように変速機やブレーキが無く部品点数の少ないトラックバイクではフレームのシビアな軽量化は不要。
なので高弾性カーボンをふんだんに使ってギリギリの軽量化をする必要は無いとは言え、材料が選び放題?なのは大きなアドバンテージになるでしょう。
新素材T1200は各業界で奪い合いになりそうな予感・・・。
航空宇宙産業、釣り竿やら・・。
自転車業界ではピナレロに優先権がありますが、東レの100%子会社ですからね。
風洞実験設備もあるし、モータースポーツや自転車以外の分野で培ったノウハウをフィードバックしていくことが出来ます。
期待は膨らみますが、このような報道も8月にあって・・・
イギリス自転車競技連盟はLOOK P24とV-IZU TCMに対し法的措置を取る可能性|Cyclingweekly
LOTUS HOPEの特許権侵害に該当しているかが争点となりそうです。
2024年1月25日追加情報
梶原悠未選手が2024シーズンからV-IZU TCM2に乗るようです。
New Bike pic.twitter.com/smKwtaK0Bl
— 梶原 悠未 Yumi Kajihara (@Yumi_Kajihara) January 23, 2024
結果は報じられていないのですがV-IZUの市販化が公開され、最近の情報ではLOOK P24は日本国内でもパリ五輪後に市販されると聞きました。
結果が出たのかしらん・・・?
LOOK P24は本国サイトには価格付きで以前から公開されている。
クランクセットとステム&ハンドルバー付属で11,999USドル≒180万円。
しかし8月の世界選手権でV-IZUを駆った佐藤水菜選手と内野艶和選手は、
11月18日まで開催されたジャパントラックカップではBS乗っていたんですよね。
11月20日現在、PIST6承認フレームにも登録されていません。
情報が更新されたり、追加情報があれば順次追記していく予定です。
ディスカッション
コメント一覧
hopeの特許侵害を避けるためにフォーク幅は180mm以下に制限されるみたいですね
狭い分翼断面と側面のヴィルテックスジェネレーターで工夫している様です
コメントありがとうございます。
LOTUS HOPEの特許は確かFフォークの幅が180~240mm、シートステーの幅は170~240mmだったはずです。
英競技連盟が訴訟を起こす可能性があるとの海外メディアの報道があってから続報が無く、その後の経緯が良くわからなくてV-IZU実戦投入再開されたし訴訟問題は解決したのだろうな、と想像するしかありませんでした。
未解決のまま競技に実戦投入再開したりメディアに発表するはずはないでしょうから。
Fフォーク外側のボルテックスジェネレーターも東レカーボンマジックは本職でしょうから。風洞実験から導いた最適解なのでしょうね。