ブノワ・ベトゥ ヘッドコーチ

2019年6月12日ロードバイク

世界選手権のメダルからは20年以上、自転車競技トラック種目ワールドカップでは10年以上優勝から遠ざかっていた自転車競技日本代表を世界の強豪国へと急激に成長させた名将がいる。
男子ケイリンで新田祐大選手が今シーズン世界ランク1位を維持。短距離種目では各代表選手が、入れ代わり立ち代わり表彰台に立っている。能力のある特定の選手個人の力に頼ることなく、ナショナルチームとして確実に力を付けてきている。

チームスプリントでは破竹のワールドカップ2連勝。

女子では小林優香選手らにも東京オリンピックでのメダルが期待されている。

ブノワ・ベトゥ・ヘッドコーチ

その立役者がフランス人で2016年10月から、自転車競技トラック種目短距離ナショナルチームヘッドコーチに就任したブノワ・ベトゥ。「東京オリンピックでのメダル獲得が仕事」と公言するこの男が、自転車競技トラック種目の強化に乗り出した。

フランス、ロシア、中国の代表ヘッドコーチを歴任。2016年リオデジャネイロオリンピックでは、中国に男女を通じて自転車競技では初の金メダル(女子チームスプリント)をもたらす快挙を達成した。

強化指定選手は伊豆で生活を共にし、ブノワ・ベトゥヘッドコーチの指導の下で科学的で効率的且つ厳しいトレーニングの日々を送る。この体制とワールドカップでの躍進は、スピードスケートのユハン・デビットヘッドコーチと女子スピードスケート選手の活躍とピッタリと重なるほど瓜二つ。

  • ナショナルチームの代表選手は伊豆修善寺で合宿を行い共同生活
  • 強度の高い厳しいトレーニング
  • 徹底した食事管理とカロリー制限(小林優香選手は20kg減量に成功)

理論的且つ科学的なトレーニング理論でナショナルチームの日本代表選手を徹底して管理しています。

競輪とケイリンは別物

ワールドカップやオリンピックでの競技種目はKeirin(ケイリン)で、漢字で書く公営競技の競輪とは異なります。同じ競技でもレース展開が全く違っていて、競輪がそのまま世界で通用しません。野球とベースボールは違いがある、と言うのと意味合いは同じ。
この違いから今までは実力はありながらも、競輪選手は国際競技としてのケイリンに十分な練習と対策が取れなかったために、国際舞台での好成績から遠ざかってしまっていた。
連盟や協会もそのための対策を充分にしてきたとは言えなかった。決定的にケイリンへの練習と対策が取れていなかったんです。ぶっつけ本番で競輪選手がケイリンに出場していた。その結果、国際舞台の表彰台から遠ざかってしまっていた。

それが、ブノワ・ベトゥヘッドコーチ就任後は、代表に選ばれた競輪選手は、競輪の合間に世界選手権やオリンピックに出場する、から強化指定選手は、オリンピックや世界選手権とワールドカップ、それに向けた練習と合宿の合間に競輪に出場する。
180度逆転したトレーニングと姿勢に方向転換。
東京オリンピックでのメダル獲得を至上命題に掲げた。このシステムを作り上げたのが、日本自転車競技連盟選手強化委員長の中野浩一とヘッドコーチのブノワ・ベトゥの2人だと思う。

中野浩一

ブノワ・ベトゥは中野浩一を「日本で唯一の真のチャンピオン」として尊敬している。中野浩一の世界選手権プロスプリント10連覇。
この前人未到の偉業は、日本で想像する以上に自転車競技の本場であり中心となっているヨーロッパでは広く人々に認知されている。中野はレジェンドであり永遠に語り継がれる選手として尊敬されている。

また当時は代表選手へのサポート体制も整っていなかった、本場ヨーロッパでは自転車競技後進国とみなされ、競輪への偏見もあった時代に、中野浩一は今後破られることのない記録を成し遂げている。
世界選手権では自腹を切って、自転車競技専門のオランダ人マッサージャーを雇ったりもしていた。選手の体のケアのみならずメンタル面にもプラスだし、選手団にヨーロッパ人が入ると、他国の言語が判り情報が入る事も大きなメリット。

競輪でもプロスプリント10連覇を成し遂げた世界選手権でも、勝負師であり天才であり続けた中野浩一。

競輪の関係団体にも自らが働きかけた。トップレベルの競輪選手が競輪に出場しない。修善寺で合宿生活をして、ワールドカップや世界選手権にフォーカスし競輪の出走は年間数レースのみ。
この選手強化体制を作り上げたのも中野浩一だった。
関連団体を説得して回り「メダルを取ればオリンピック後に競輪の観客は増える」と説得して回った。

手弁当で偉業を達成した中野浩一が、ブノワ・ベトゥと共に、科学的で結果に裏付けられた近代的スポーツトレーニング理論と環境を整え、東京オリンピックでのメダル獲得に向けて努力を積み重ねている。

東京オリンピックへ向けて

世界選手権やワールドカップでの成績からも、東京オリンピックでのメダルは確実に期待できるところまで選手たちがレベルアップしてきています。

東京オリンピック自転車競技トラック種目の競技会場は、伊豆ベロドローム。日本国内で唯一の国際基準を満たした全天候型板張りの室内型競技場。1周250mカント=バンクの最大傾斜角度は45度。シベリア松で作られた走路は走行抵抗が少ない。

本大会が開催される競技場で、選手たちが常に練習できることも大きい。

競輪場はオリンピックや世界選手権を開催する基準と異なり、そのままでは国際的な公式大会を開催できません。1990年に日本で開催された自転車競技世界選手権では、前橋競輪場を改装し、通常のバンクの内側に斜度45度!の板張り走路を増築。
世界選手権開催のために、日本の建築技術を駆使して作り上げたバンクは、板張り走路のうねりが非常に少なく、精度が高くて「走り易くタイムが出るバンク」と言われていました。

自転車競技の公用語はフランス語なので、世界選手権の大会中の場内アナウンスはフランス語。前橋に世界選手権トラック競技を見に行った、と言うよりも競技場内はその雰囲気とフランス語の場内アナウンスで、まるで海外に行ったみたいな感覚になりました。
世界選手権の開催地がどの国であろうと、会場内はその雰囲気は変わらないのでは。貴重な経験だったなー。当時は共産圏のまるでサイボーグのような選手が世界を圧倒していた時代でした。

話は戻って、自転車競技短距離トラック種目は、スピードスケートの強化体制とホントにそっくり!

競輪からケイリンへ日本の実力を押し上げた本気の改革 | NHK SPORTS STORY

東京オリンピックでの活躍も期待大です。

2020トラック世界選手権を終えて

2020 UCI Track Cycling World Championships in Berlin

世界選手権での順位を踏まえて、正確には競技団体からの正式発表待ちですが、オムニアムでは男女1人ずつ。短距離種目では女子ケイリン1人の出場枠が確定しました。
アジア選手権で優勝、ワールドカップ2大会連続金メダルで期待が高まっていたチームスプリントは9位に終わり、オリンピックランキング獲得ポイントも9位に後退。

チームスプリントで枠を獲得した8カ国に、スプリントとケイリンにそれぞれ2枠ずつが与えられる。

男子チームスプリントでオリンピック出場枠を獲得すれば、スプリントとケイリンの出場枠も連動して増える選考基準になっています。
残念ながらこのボーナスポイントとも言える選考基準のルールを優位に生かすことができませんでした。
しかし、ドーピング問題でオリンピックに参加が認められていないロシアが日本よりもランキング上位に位置しています。7位のロシアの出場が認められないと正式に発表があれば、チームスプリントで現在ランキング9位の日本が出場枠内の8位に繰り上がることになります。
それと同時にスプリントとケイリンで各1人の出場枠が2人ずつに増える。他力本願なところに少々寂しさも感じますが・・・。

熱血漢のブノワ・ベトゥヘッドコーチにはこんな報道も。

梶原悠未選手の記事はこちら

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