MAVICキシリウムPROカーボンSL Cクリンチャーホイール

2019年6月9日

MANICキシリウムPROカーボンSLC

長い歴史と耐久性や信頼性を誇るMAVICロードバイク用ホイール

創業は1889年フランスのリヨン。ホイールの製造国は現在ではルーマニア。ハッチンソンのOEMで知られるタイヤはMADE in Franceだったり、展開するウェア等のアパレルはインドネシア製になったり、シューズはベトナム工場製。

創業当初のアルミリムメーカーから、様々なアイテムを展開する自転車総合メーカーになってきている。

キシリウムPROカーボンSLクリンチャーは、2018年にUSTチューブレスのホイール&タイヤシステムに刷新されています。僕のは旧型のクリンチャー仕様のホイールです。

スペック

カタログホイール重量 Pair 1390g、Front 615g、Rear 775g

リム内幅 17mm(リムの単体重量は400g)

フルカーボンリム F18H R24H フリー側ラジアルのイソパルス組スチールスポーク

リアハブはインスタントドライブ360

MAVICイクシオンPRO グリップリンク(フロント専用)、パワーリンク(リア専用)700×25Cクリンチャータイヤ付属

新モデルのUST仕様はリム内幅が19mmに更に広がり、USTチューブレス対応になっています。カタログ重量では1445gになっていて、クリンチャー仕様の旧モデルの方が55g軽いのだ!USTを買えない強がりですが・・・

インプレッション

一言で言うなら、乗り心地が良くて疲れない高級サルーンのよう。

25CイクシオンPROのタイヤ特性と相まって、振動吸収性が高く、おそらくMAVICのホイールの中で振動吸収性は1番ではないかと思う。チューブレスに匹敵しうるレベル。
ペダリングに対しての剛性感は、若干のタメというか、たわみやしなり、それらによるロスは感じませんが、踏み心地はマイルド。でも貧脚では剛性不足は感じないし、ヘニャヘニャにたわむようなホイールではない。適度なバネ感があって、マイルドさがロスなく推進力になっている感覚があります。

サイクルスポーツ誌で安井行生さんが某社ホイールを「腰のないうどん」に例えていたけれども、上手い表現だと思う。キシリウムPROカーボンSLはそんな事は無く、適度なしなりが一瞬のタメの後に、きちんと推進力に変換されている感じ。脚に優しいけれど良く進むホイール。

加速や登りでも、最軽量とまではいかないけれど、重量の軽さと、マイルドとは言っても剛性不足はない、適度なしっかり感とバネ感で応答性も良いです。一点に突出した性能があったり、レースで勝つためにギンギンにチューニングされたホイールではないけれど、平均点の高いバランスの取れたホイールだと思う。

ロングライドやまったりライドには最高のホイールのうちのひとつだと思う。平坦レースの速度域=40km/h以上を想定してレースで勝てるホイールなら、他にもっと適したホイールがあると思う。
カンパニョーロ・ボーラとか。想定常用速度35km以下、特に30km/h以下の速度域なら、凄く使用条件にフィットする良いホイールだと思います。30~35km/hの速度域はディープリムのエアロ効果が出て来るので、この中間域ではキシリウムPROカーボンSLでなくては!って程でもないかもしれません。

キレキレの反応の良さと加速を求めるなら、フルクラム・レーシングゼロが上。短距離レースでの高速域を重視して、レースで勝つためのホイールなら40mmハイト前後の軽量カーボンチューブラー。ヒルクライムスペシャルなら、もっと軽いホイールはある。
キシリウムPROカーボンはレースで勝つためのホイールではないけれど、乗り心地が良くて疲れにくい、そして重くも鈍くもない。自動車に例えるなら、レーシングカーではなく高級サルーンです。

コスミックPROカーボンSL USTはイベント会場で試乗させて貰ったことがあります。キシリウムPROカーボンSLとは乗り味が全く異なり、剛性感が凄く高くて僕では踏み負けてしまった・・・速いけど。こちらは体重と脚力のあるライダーの短距離レース用といった印象を受けました。この鬼剛性から2019年度のUSTホイールでは、通称ノンSLモデルを追加発売したのだろうな~。

実業団E2入賞クラスの人に貸したところ、「少し柔らかさが気になる。高速での伸びはボーラウルトラ50が上。」とのことで、あまりお気に召さなかった模様。ボーラウルトラ50も最初は柔らかいと言っていた剛脚には、好みに合わなかったようです。
このリムハイトとしては、と言う前提条件で高速域も悪くはないのだけれど、ロードレース先頭集団の速度域よりも、ツーリング的な速度域で快適で気持ちよく走れるホイールだと思う。

MAVICホイール全般に言える事だけれど、振れが出にくくメンテナンスの手間が掛からない。また、インナーニップルではないので、振れが出たとしても作業は楽です。スポーク本数を無闇に減らしていないのも好印象。

タイヤ:MAVICイクシオンPROクリンチャー

MAVICイクシオンPROクリンチャータイヤ

イクシオンPROクリンチャータイヤは減りは比較的早いけれど、210g(1本)と軽量で、鏡のような路面、荒れた路面、浮き砂利、ウェット路面などの条件が変わった場合でも、グリップが良く乗り心地も良い満足できるタイヤです。
ハッチンソンOEMのタイヤは基本的に性格が似ているところがあります。また、ホイールへの着脱が柔らかくて凄く作業がしやすい。タイヤ交換やパンク、このタイヤでパンクした事はないけれど、この作業性のメリットは大きい。

格段に軽い転がり抵抗のようなわかり易い目立った特性に特化されている訳でなく、タイヤに求められる全ての項目で80点。
欠点の無い優等生と言った印象。
転がり抵抗に特化したタイヤは、総じて雨や浮き砂利でのグリップや振動吸収性に不満が残ります。

チューブは好みの分かれるところ。真っ黒のバルブがカッコいい。しかし決して軽くはないし、フレンチバルブ・ビキナーにはナット無しのバルブは、空気を入れる際に扱いにくいかもしれません。
あと、使用1年程度でバルブ接合部からのエアー漏れが1度だけありました。チューブに関しては積極的にMAVICを選ぶ理由は、黒いバルブのカッコ良さしかありません。

ブレーキング性能

素晴らしいの一言!iTgMAX凄いぜ!晴天時も雨天時もリムブレーキの利きとしては最高レベルです。中華カーボンや某他メーカーのカーボンホイールを使っている友人は、このMAVICカーボンリムiTgMAXのブレーキの利きにひたすら驚いていました。

このブレーキの利きの良さと、タイヤのグリップの良さ、振動吸収性の良さ、適度にタメがあるけれど剛性不足感のないホイール。これらが相まってダウンヒル、特に路面の荒れたダウンヒルでの走りもGOODです。

但し、純正指定のカーボンリム用ブレーキシューは、当たり面の熱ダレで黒く変色してくると、制動力が劣化してしまいます。定期的にヤスって削っておくと、初期性能の高い制動力を維持できます。

カーボンリムは物によって耐久性や強度もだけれど、ブレーキング性能が次元が違うと言っていいくらい天地の差がありますね。ダウンヒルのブレーキングによる熱で、破損や変形するカーボンホイールもある。一口にカーボンと言っても、その品質はピンキリです。

ハブ

MAVICインスタントドライブ360ハブ

インスタントドライブ360の40ノッチハブは、脚を止めている状態から踏み始めに強く感じますが、遊びが無くてダイレクト感が強く、物凄く精密に作られているような感じ。
ハブシャフトを手で回してみると、回りは重いのだけれど、実走では回転の悪さは全く感じません。
アルミ製フリーボディの耐久性については、まだわかりません。シマノ対応だと、スプロケットとの勘合部の山が低いので、ガリついてしまうアルミフリーボディが多いので、不安要素が無い訳ではありません。使い込んでいけば、これから判ってくるでしょう。

MAVICの中の人は純正グリスを指定量(1.5g)使用する以外は、保証対象外と言っていました。音がうるさかったので自己責任でワコーズのグリスを多めに入れて使っています。
これでだいぶ音は小さくなりました。マイナーチェンジで後期モデルから、前期型ほどは音が大きくなくなっています。
但し構造上、粘度の高いグリス、例えばシマノの通称デュラグリスなどは、ラチェットがグリスの粘り気でくっついてしまい、空転しなくなってしまうのではないかと思う。
粘度の低い柔らかいグリスなら、今のところ使用上問題は発生していません。

耐久性が高く信頼のおけるMAVICですが、メンテナンスフリーではありません。最低でも走行距離4,000~5,000km程度に1回は、フリーボディを外してグリスアップをお勧めします。
雨天走行が多めならメンテ頻度をこれよりもあげましょう。インスタントドライブ360のフリーボディは工具不要で簡単に外せます。

MAVICフロントハブ

対してフロントハブは無荷重の空転時では、今までのMAVICハブよりも回転は凄く軽いです。接触シールベアリングではなくなったみたいに軽く回り続けます。

MAVICのクイックレリーズは操作感と、確実に締まる締め加減も最高!個人的には僅かな軽量化の為に、固定力や操作感に劣るスキュワーに変更する必要は無いと思います。

まとめ

最近、某サイクルスポーツ誌のインプレ記事で、Y井さんがUSTチューブレスの新型キシリウムPROカーボンUSTは良くなったが、旧型のクリンチャーモデルは良くなかった。などと言っていますが、乗り手と使用用途にマッチすれば、旧型のクリンチャー仕様も素晴らしいホイールだと思います。

想定速度はダウンヒルを除いて35km/h以下での使用状況なら、ヒルクライムを含めたロングライドでも何でも使える優れたホイールだと思います。
リムハイトが低い割には空力特性も悪くない。レースで勝つための決戦ホイールではなく、非レース派のバランスよくまとまった高級高性能グランドツーリングカー的なホイールだと思う。

MAVICキシリウムPROカーボンSL USTも買っちゃったの巻