MAVIC ID360フリーボディのメンテナンス
MAVICジャパン公式ブログ『ホイールハブID360 メンテナンスしていますか?』がX(旧Twitter)界隈の一部で話題になっています。
今までは3,000~4,000km走行でグリスアップ推奨だったのに※約1,000キロに1回程度のチェックを推奨しております。と変わったのは何故?
MAVIC ID360ハブ&フリーボディ
ディスクブレーキ&スルーアクスルの普及から、従来のFTS-Lフリーボディからインスタントドライブ(ID)360に変更されていったMAVICフリーボディ。
FTS-Lではスルーアクスルの太いハブシャフトに対応出来ない。MTBでは図の13番=エンドキャップを交換すれば様々な規格(エンド幅や径)に対応出来る、などが理由だと思われます。
フリーボディの交換も容易で、各種各メーカーのスプロケットに対応出来る互換性もメリットのひとつです。
しかしメリットばかりではありません。
MAVIC ID360採用ホイール発売当初から使っている経験に基づく考察と見解をまとめてみました。
雨天走行バリバリだと3,000~4,000km持たないから。
MAVIC ID360フリーボディの構造とメンテナンス
2023年5月末にMAVIC ID360フリーボディシールキットV2が発売開始されました。
従来品と比較して防塵防水性能を高めた改良型の新製品です。
では、今まではどうだったのか?
MAVICハブは接触シールベアリングが使われています。それ故にベアリングの耐久性は高くメンテナンスフリーでもあります。
シマノ製BBと同じ耐久性重視の設計思想ですね。防塵防水性も高く基本的にはメンテナンスフリー。
だから回転重いといわれてしまうのですが、、、手で回した感触と実走時の抵抗はイコールではないんですけどね。
しかし!ハブ本体の設計や構造とは異なり、ID360フリーボディは正直に言って防塵防水性が低く頻度の高いメンテナンスを必要とするのです。
画像の金色のギヤ=40ノッチの精度の高いギヤがバネで押されて互いに密着することで、ペダリングの駆動力を後輪に伝達します。
このギヤがグリス切れが原因となりほんのわずかでも摩耗すると、、、目視では分かりにくい程度の僅かにすり減って傷み始めただけでも、噛み合わなくなってしまい「壊れた!」となってしまうのです。
MAVICでは純正グリスを指定量、1回1.5g使うことを推奨しています。
漕いでいるときはバネの力で噛み合っているギヤは、構造上面ラチェットのギヤが脚を止めて空転しているとき常にギヤ同士が擦れ合っています。
・漕いでいるときはギヤが噛み合う。
・空転時は接触しながら空転=これがフリーの音
フリーボディ内部の潤滑に必ず必要なグリスですが、多過ぎるとグリスの粘度の影響でバネで押せなくなりギヤが噛み合わなくなるトラブルが発生してしまうことも。
また、シマノグリスのように粘度の高いグリスを使うと、これまたバネで押せなくなってギヤが噛み合わなくなってしまったり、グリスの粘り気でギヤ同士がくっついたまま離れなくなる=「空転しない」「フリーにならない」事態にも。
だからこそ使用するグリスと使用量までもが指定されているんです。
グリスの種類(粘度)だけでなく量によっても、フリーが正常に動作しなくなってしまう場合があるからです。
ID360フリーを分解したことのあるサイクリストは既知のことですが、かなり弱いバネですよね。こんな程度の力で押し付けてるんだ、と。
ライド中、しかも自宅やスタート地点から遠く離れた遠方でフリーが噛み合わなくなり漕げなくなった・・・このようなトラブルに見舞われないようにするためにも、メンテナンスが重要になってくるのです。
MAVIC ID360のギヤ=ラチェットを痛めてダメにしてしまうと、補修部品は結構なお値段になります。
MAVIC ID360ラチェット&スプリング&グリスキットは¥11,000_(2023年12月現在)
余計な出費を抑えて、末永くMAVICホイールを愛用する為にも必要なメンテナンスになります。
DTスターラチェットも基本的な構造は同じで、DTも同様に頻度の高いメンテナンスが推奨されています。
MAVIC ID360のメンテナンス
防塵防水性が高いとされるシールキットV2を使っていないケースでの話になります。
MAVIC ID360フリーボディは工具不要、スプロケットは取り付けたまま手で引っ張るだけで簡単に分解することが出来ます。
しかし!固着してしまい外れなくなることも少なからず。
ID360フリーボディが外れなくなってしまったときの取り外し方は過去記事にしています。
MAVIC正規代理店のプロショップやMAVICジャパン中の人にも確認済みの方法になります。ご活用ください。
なぜ推奨メンテナンス頻度が変わったのか?
結論から申し上げますと、雨天ライドをする場合では3,000~4,000kmごとのグリスアップでは足りないからです。
フリーボディの防塵防水性が低いので、雨だろうと欠かさず毎日乗っている知り合いのサイクリストがノーメンテだったせいもあり、年に1回毎年のようにラチェットをダメにしてしまった例を聞いています。
『雨の日には絶対に乗らない』最善の条件が整った使用状況のときだけ、3,000~4,000km毎のグリスアップで済ますことが出来ると考えるべきです。
推測ですが「指定通り3,000~4,000kmでグリスアップするつもりだったのに、その前にラチェットが壊れてダメになったじゃないか!」と雨天走行するサイクリストからクレームが入ったのではないかと。
水有り泡々洗車も洗剤の影響でフリーボディ内部に水が余計に侵入し易くなるために、個人的には避けています。
水洗い洗車後に毎回ID360フリーボディのグリスアップをするなら、水洗い洗車も悪影響はないと思います。
繰り返しますがMAVIC ID360は防水性が低く雨天走行や水洗い洗車には弱いのです。
・雨天走行や水洗い洗車をしたらその都度(旧シールの場合)
・雨天走行しなくてもメーカー推奨の1,000km毎に分解して点検
・グリス切れや内部に水の侵入があれば、その都度清掃とグリスアップ
・まったく雨で乗らない使用条件での最長不倒距離が3,000~4,000km
ラチェットが要交換になってしまったら手軽なお値段で気軽に交換するような部品ではありません。
ライド中に空回りするようになっても困りもの。
最長不倒距離到達前に、安全を期してこまめに点検とグリスアップすることをお勧めします。
発売の翌年からなので2017年からID360ハブ採用のキシリウムPROカーボンSLクリンチャー(USTチューブレス以前のモデル)を使用継続しています。
純正グリスの他に自己責任でワコーズSMGグリス及びTMGグリスを使用してテストしています。
多少多めにグリスを入れても問題なく動作しています。今までトラブルもありません。
個人的見解ではちょう度2号かこれよりも柔らかい(0~1号とか)グリスなら動作に異常がでることはなさそう。
グリスアップ後にいきなり実走しないで、フリーの噛み合いと空転の動作確認をしています。
※メーカー保証対象外となります。自己責任で行ってください。純正グリスは高いのでメンテ費用を抑えられますがお勧めはしません。
ラチェットは消耗品扱いで2年保証又は3年の延長保証対象外ですが・・・。
しかし多めにグリスを入れているので防水性は高くなっています。
雨天走行2時間半直後にフリーを分解した画像。内部に水は侵入していません。
メンテを怠り真っ赤に錆びてラチェットギアがダメになった画像はインパクトがあります。なのでID360はダメダメなイメージが先行してしまいがち・・・。
普段から適切にメンテナンスしていれば、短時間の雨天ライドなら水が入ることはない。
雨天走行が長時間に及んでも、メンテすればラチェットギヤも錆びる事無く長持ちします。
ID360フリーボディの点検とメンテナンスさえ怠らなければ、振れも出にくくて耐久性や信頼性の高いMAVICホイール。
適切なメンテナンスで長く愛用して頂きたいものです。
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