「スーパータック」ダウンヒルポジションがUCIのルール改正で禁止に!

2021年2月6日

スーパータック禁止(クリス・フルームのダウンヒルポジション)

UCIは現地時間2021年2月4日夕刻「ライダーの安全と持続可能な開発への取り組みを強化」と題して、競技規則の改正を発表しました。

その中には、俗に言う『フルーム乗り』トップチューブにまたがりハンドルバーに伏せるエアロポジション「スーパータック」の禁止措置も含まれています。

UCI:選手に安全に関する一連の対策

2016年ツール・ド・フランス第8ステージ、クリス・フルームの逃げ切りによるステージ優勝で一躍有名になったダウンヒルポジション。

プロトン内(後続の選手)に危険をもたらす可能性があるとして、禁止措置に踏み切りました。

この規則は4月1日から実施されます。

スーパータック

2016年ツール・ド・フランス第8ステージ、ペルスールド峠頂上直前でアタックしたクリス・フルーム。

その後のダウンヒルで後続を引き離し、一躍世界中で注目の的となったスーパータック・ダウンヒル。

スーパータックは2018GPインダストリアアルティジアナートでバーレーン・メリダ所属のマテイ・モホリッチによって完成されたと言われています。

極限まで体を伏せて、状況によっては下ハンではなく上ハンを持って、前影投影面積を限界まで減らして空気抵抗を減らすライディングフォーム。

スーパータック禁止措置も頷ける

スーパータックはダウンヒルで1度だけ試してみたことがあります。もちろん見通しの良い直線の下りで、視界に自動車や他の通行者がいない状況で。

ワールドツアーのトッププロのようにサドル~ハンドルの落差はないし、同じようにとまでは言えないスーパータックのライディングフォームではありましたが、、、

それでも・・・

超怖い!

路面の段差や舗装のえぐれによる陥没があったら、避けきれなければ一撃一瞬で吹き飛ぶ恐怖が脳裏をよぎる。

怖すぎる!

確かに空気抵抗は減りペダリングしなくても加速するタイムを稼げる速いフォームではありましたが・・・

公道で一般サイクリストがやっていいフォームじゃない。

身を持って体験しました。

このときは下ハンを持ってのスーパータックでしたが、マテイ・モホリッチ選手のような上ハン持ちのスーパータックなんて絶対無理。

一撃で吹き飛ぶ恐怖感が10倍増しになることでしょう。

プロのレース中ではスーパータックに絡んだ落車事故は過去には無いようですが、UCIの規定で禁止措置になったことも頷けます。

良い子のみんなは真似しないでね。

ロードバイクのサドルの位置は、高さも前後もペダリングに適しているのみならず、前後の重量配分=重心の位置としても適切なんだと再認識しました。
※状況次第で重心移動や荷重を抜く必要性がある場合もあります。

選手側からは反論も出始めたようです。それ以外にやることあるだろ!と。

UCIワールドクラスのロードレースで、スーパータックに起因する落車事故は僕の知る限りありません。

その他禁止措置

スーパータック禁止のほか、新たな禁止措置として

1.所定場所以外でのボトルの投げ捨てを禁止(30~40kmごとにコースに廃棄指定ゾーンを設ける)

注:4月18日追記

UCIは選手側との話し合いの末、罰則措置の緩和を発表しました。

一方、ブレーキレバーに内側から指をかけるエアロポジションが処分対象に。※このポジションは僕も使ってます。

JCF日本自転車競技連盟の新ルール解説。ツイートよりpdfへ辿ってください。

2.フィニッシュゾーン付近のバリケード強化

などが含まれています。

共に2020年の落車事故を踏まえて安全対策の強化が目的でしょう。

また、過去5年間に主要なUCIワールドツアーのロードレースで発生した事故とインシデントのデータベースの開発に着手したとの報告もあります。

インシデントとは事故には至っていないが、事故になる可能性が十分に考えられる事故未満の状況が含まれます。
インターネットのセキュリティ・インシデントなどで使われる用語。

2月11日追加

ドロップハンドルの水平部分に上腕を乗せる疑似TTポジションも4月1日付で禁止になります。スーパータックも含めUCIワールドクラスの選手達なら許可しても良いのではと思います。しかしジュニアカテゴリーも含めて考えると、体も発達していない、技術的に未熟な選手も含まれることを考えると、禁止もやむを得ないのかと。

今回のUCIルール改正は選手の安全のためにも、また観戦するロードレースファンのためにも歓迎すべきことだと考えます。