JCFがトラック種目パリ五輪代表候補選手発表
5月22日、日本自転車競技連盟(JCF)がパリ五輪トラック種目の日本代表候補選手を発表した。
候補選手を日本オリンピック委員会(JOC)へ推薦しJOCの認定を経てから、パリ2024オリンピック日本代表として正式に認定される。
パリオリンピック自転車競技トラック種目日本代表候補選手
JOCに推薦された代表候補選手は男子7名、女子6名の計13名の選手。
50音順。敬称略。
男子 | 女子 |
---|---|
今村 駿介(中長) | 池田 瑞紀(中長) |
太田 海也(短) | 内野 艶和(中長) |
小原 佑太(短) | 太田 りゆ(短) |
窪木 一茂(中長) | 垣田 真穂(中長) |
長迫 吉拓(短) | 梶原 悠未(中長) |
中野 慎詞(短) | 佐藤 水菜(短) |
橋本 英也(中長) |
リザーブ(フランス同行)
松田 祥位 (中長)
梅川 風子 (短)
リザーブ(フランス同行なし)
山﨑 賢人 (短)
(短)は短距離種目選手、(中長)は中長距離種目選手。
※選手の得意不得意の特性として短距離と中長距離に分かれるが、オリンピック出場枠は選手個人ではなく国に割り当てられるため、それぞれの種目で出場権を獲得していれば、短距離種目選手が中長距離種目に出場することも可能。
トラック競技 パリオリンピック日本代表候補選手発表https://t.co/9nJI9drNWL
— More CADENCE (@MoreCadence) May 22, 2024
自転車トラック種目の出場権選考方法は複雑怪奇
パリオリンピック出場枠選考条件(pdf)UCI公式の英文
国際レース、世界選手権、大陸選手権、ネーションズカップの順位を基にポイントに換算。個人種目の場合ポイント獲得は選手だが、ランキング上位の国へ代表権が割り振られる。
出場枠の割り振り制限
しかし話は単純ではありません。ポイントランキングだけで出場権が決まる訳ではなく複雑なルールが定められています。
・自転車競技トラック種目出場選手の世界各国の総合計出場枠は男子95人女子95人合計190人。
・1つの国から出場できる最大人数は男女それぞれ7人まで。
・チームスプリント、チームパシュートの団体種目で出場枠を獲得すると個人種目への出場枠も与えられる。
・1例としてスプリント強豪国がポイント上位3位までを独占しても「上位の国から1国1名計7名に出場枠が割り振られる」ルールのため、出場枠獲得は強豪国でも人数制限がある。
以上の条件があるために、獲得ポイント上位選出内でも1国7名の制限に触れてしまう場合があります。
日本が獲得している出場種目は、
男子短距離 | 女子短距離 |
---|---|
チームスプリント | ケイリン |
ケイリン | スプリント |
スプリント |
男子中長距離 | 女子中長距離 |
---|---|
チームパシュート | チームパシュート |
マディソン | マディソン |
オムニアム | オムニアム |
女子短距離は団体種目であるチームスプリントの出場権を逃してしまったが、日本は男子はトラック競技全種目への出場枠を確保。
各国に割り振られる派遣選手枠最大7名を、女子は6名の派遣選手枠を獲得している。
男子代表候補選手選出の問題点
男子自転車競技トラック種目の出場枠は、短距離種目のチームスプリント及び中距離種目のチームパシュートの団体競技でパリ五輪出場権を獲得している。
短距離種目も長距離種目も満額の出場種目枠と、同じく派遣選手団としても最大の7名の枠を確保している。
しかし、、、ここで問題が!
男子トラック短距離で獲得したパリ五輪出場種目の枠はチームスプリント3名、ケイリン2名、スプリント2名。
ケイリンとスプリントの個人種目の2名ずつは、団体競技であるチームスプリントと重複させなければならないので、短距離種目としての日本代表枠は5名ということになる。
五輪出場枠は計7名分だが、派遣選手は5名以内で選出されることになる。
そして短距離種目で最大枠で候補選手を選出したと仮定すると、中長距離種目に割り当てられるのは2名分しかなくなってしまう。
チームスプリントやチームパシュートの団体種目で五輪出場権を獲得すると、出場できる選手の人数は増えるが、
出場枠の総合計>1国に割り振られた最大出場権7名
となり、7名をどの種目に割り当てるかが必要になってしまう。
短距離種目で最大枠の5名の選手を代表候補に選出すると仮定したら『各国最大7名まで』の条件から、中長距離種目の出場選手が制限されてしまうことになるのです。
男子トラック中長距離種目で獲得したパリ五輪出場種目の枠はチームパシュート4名、マディソン1組2名、オムニアム1名の計7選手分の獲得枠。
国際大会で代表権を得られるポイントを取っても、国ごとの7名枠の制限から出場種目や派遣選手を制限しなければならないジレンマに見舞われてしまうのです。
JCFから日本代表候補として発表されたのは、男子短距離選手4名、男子中長距離選手が3名の計7名の選手。
国別の派遣選手団の最大枠である7名の選手が選出されました。
しかし、、、
中長距離種目の代表として推薦されたのは窪木一茂選手、橋本英也選手、今村駿介選手の3名の選手。
この選考から推測できることは、
・チームパシュートは4人の選手が先頭交代しながら250mバンクを6周4,000mの距離を争う。チームパシュート出場選手4名に満たない3名しか選ばれていない。
短距離選手が出場することもルール上では可能だが、選手の特性やチームワークの面で、またレースのスケジュール面でそれはあり得ない。
チームパシュート・パリ五輪派遣を望む
競輪のバックボーンがある短距離種目とは異なり、ロードレース同様にトラック中長距離種目は世界とは大きな隔たりがありました。
東京オリンピック代表選考レースの段階から、ナショナルチームとしてだけでなくチームブリヂストンサイクリングとして選手と所属企業が男子チームパシュート出場枠獲得のために情熱を捧げてきた。
レースの度に日本新記録を更新し続けたと言っても過言ではない。
2024トラック・ネーションズカップ第2戦香港大会で3分48秒127のアジア新、日本新記録を更新。
世界との距離が確実に縮まってきた。
男子チームパシュートのパリ五輪出場枠10国(10チーム)を余裕でクリアするポイントランクング5位に躍進した。
日本が男子チームパシュートでオリンピックの出場権を獲得したのは初となる。
代表候補選手の選出は1国男子7名枠の中で、出場種目を厳選し割り振る必要に迫られてしまう。
中長距離種目全てに出場しレースをこなすとなると、蓄積していく疲労もハンパではない。
メダル獲得を最優先に考えると、JCF発表のメンバーになるのかもしれない。
しかし、長年の悲願であるチームパシュート五輪出場を果たした歴史的な意味は大きい。
日本人のメンタリティとして選手の側も観戦や応援する側としても、団体競技のチームワークや友情、助け合いを大切にする価値観がある。
自転車競技トラック種目世界各国で男子95名1国7名の枠があるので仕方のない面があるとは言え、再考を期待したい選考である。
枠に欠員が発生した場合ポイント上位の国から再選の割り当てがあり、8名の派遣選手団に増員される可能性に賭けるしかないのかもしれません。
5月29日に選考理由などの発表記者会見があるそうです。
正確な選考理由はこの時を待つしかありませんが、五輪枠を獲得した種目に出場できない、枠を獲得した選手に何の不備も無いのに選考漏れする選考には疑問が残ります。
5月29日記者会見
パリ五輪チームパシュートには本来は短距離種目が本業の、中野慎詞選手がメンバーに加わり出場することになりました。
出場枠の制限で、これまでの国際レースでポイントを稼ぎ、日本新記録を更新しながら出場権を勝ち取ったメンバーで五輪に臨めないのは残念です。
シマノ(SHIMANO) ペダル(SPD-SL) PD-R550-L ロード ブラック EPDR550L
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません