DENON DL-103開発者と孫の物語

DENON DL-103 LC2

DL-103はNHKとDENONがFMラジオステレオ放送用に共同開発。再生周波数帯域や周波数特性等の性能は勿論のこと、FMラジオ生放送中の針飛び等のトラブルは許されない。放送局用としてモノラルレコードも共通のカートリッジで、交換不要のまま再生する必要もある。
NHKからの要求は厳しいものだった。
※当時のブランド名はデンオン読み。デンオンはブランド名で会社は日本コロンビア。

その要求に応えて1964年に完成したDENON DL-103。
※一般向けの市販は1970年から。1970年発売当初のメーカー希望小売価格は16,000円。大卒初任給4万円だった時代。

アナログ再生に取り組んでいる古くからのオーディオファイルやレコード愛好家なら、バリエーションモデルを含め、誰もが使った事があると言っても過言ではない。60年経った現在でも生産が続けられている永久不滅のMCカートリッジ。

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DL-103を開発した祖父と孫の物語

季刊アナログ誌Vol.80 2023SUMMER

季刊アナログVol.80
DL-103を開発した祖父と孫の物語

このツイートが全ての始まりでした。

当時91歳の誕生日を入所していた老人ホームで迎えた、DL-103を開発した松田等さん。コロナ禍でもあり家族さえ面会が禁止されていた間に認知症が進行してしまったようです。

この当時の僕は、X(旧Twitter)ではロードバイク関係のポストがほぼ100%。

相互フォローの自転車業界関係者さんのアカウントが、ゆうたろうさんのポストをRTしてTLに回ってきた。

DL-103はNHKと共同開発されたことは広く知られています。しかし一般に開発者の名前は表立って公表されていません。
これはマジな話だ!フェイクではない、と。

画像にあるDENON DL-103 LC2は、今から30数年前に僕が初めて手にしたMCカートリッジ。

オーディオや音楽を教えてくれた原点です。

余計な脚色の無いDL-103は、時として地味と評価されてしまうこともありますが、MCカートリッジの基準であり原点とも言える普遍性のあるサウンド。
高解像度の頂点とも言って過言ではないLYRAのカートリッジを愛用している今でも、手放すことが出来ない。
MCカートリッジのエバーグリーン、金字塔のひとつ。

Twitterでどこの誰かもわからないアカウントに頼むよりも「DL-103開発者の為なら」と、DENON公式や日本コロンビア公式が協力を申し出そうな話ですし、そうなれば現役時代に祖父松田等さんと面識のある業界関係者と直接会う機会が出来るかもしれない。
その方がご本人も喜ぶのではないかとの思いから、このツイートをした次第。

当時ロードバイク関係で、何度も炎上している攻撃的なアカウントからフォローされていて、すかさず「決めるのはゆうたろうさんやご家族。強制することではない」と横槍が入る。

強制したつもりもないし、文字数制限いっぱいでこのツイートになってるんだけど・・・。

決めるのは当人なんて至極当たり前のこと。当たり前のことをさも偉そうに・・・。

本題から逸れた外野と関わっても余計な手間と時間が取られるだけ。めんどくさいので以後は何度かゆうたろうさんにDMする形でやり取りをしました。

横槍入れてきたあなたは、ゆうたろうさんや松田等さんに何ができるのよ?

設置を変えると再調整が大変なロクサン・初期型ザクシーズとグラハムエンジニアリングのセッティングをもし依頼されたら「DL-103開発様の為なら」と覚悟してのツイートなんだけど。
自分で言うのも何だけど、コンディション維持するだけでも並大抵のことではないんだけど。

梱包⇒移動⇒再設置とセッティングまでをトラブル無く、良い状態で完成させるまで。
アナログに取り組んでいるオーディオファイルにしか理解できないでしょう。

初期型ザクシーズの持病天板反り(後継機種は対策済みで改良されています)。グラハムもバランスメインウェイトのダンパーゴムの劣化やらあるし・・・。
海外製品の一部には、音質にはかけがえのないものがあるけれど、耐久性や長期間の信頼性に難があるオーディオ製品も少なくない。

カートリッジ交換から再調整するだけでも、その大変さはロードバイク垢の分からん人には分からないだろうな。
松田等様、ゆうたろう様、ご家族様に恩を着せるつもりは微塵も有りません。
DL-103愛用者なら「開発者様の為なら」との思いが馳せるのは僕だけではなかったはずです。

話を戻して、

DL-103を共に開発したハイフォニックミュージックアート城井府吉さんの存在をDMで伝えたのも僕が最初です。

DENON MC型カートリッジ DL-103
DENON MC型カートリッジ DL-103

季刊Analog誌Vol.80 2023年SUMMER

DL-103を開発した祖父と孫の物語

日本コロンビアとDENONの協力のもと、松田等さんにDL-103でワルキューレの騎行をレコードで聴かせることが実現しました。

その過程は季刊Analog誌Vol.80 2023年SUMMERに掲載されています。

DENONはDL-103開発当時のNHK技研との打ち合わせ議事録を持参。

公式にメーカーが協力したからこその貴重な資料だし、一介のオーディオマニアには出来ないことです。

松田等さんのDL-103開発当時のポストは、日本コロンビア株式会社三鷹工場技術部開発主任。

NHK-FM放送のために開発され、アナログレコードの歴史と共に60年もの時を歩み続けたDL-103。

そのDL-103の歴史に新たな1ページが加わりました。

こうしてメディアに記録が残るのも、結果として良かったと個人的には今でも思っています。

DL-103を愛してくださる全ての方々、本当に、有難うございました。

https://twitter.com/matsuda_dl103/status/1667877368885817344

追伸

5月13日は松田等さんの誕生日にあたるそうです。

『DL-103を開発した祖父と孫の物語』
それはTwitterへのある投稿から始まった~
https://twitter.com/matsuda_dl103/status/1667875327228661760
当時の日本コロムビアとNHKが1964年に共同開発したDENON DL-103。60年の時を経た今も現役で製造が続けられている不滅のMCカートリッジである。
高齢となったDL-103開発者とお孫さんの感動の物語はオーディオファンなら必読です。

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