
ジャズの名門レーベルの定番名盤を敢えてここでは外し、ジャズアルバムとしてはマイナーな部類かもしれないけれど、録音の観点からジャズの優秀録音CDをピックアップしました。
特にリファレンス・レコーディングス社キース.O.ジョンソン博士の録音は、クラシック的な音場の奥行きや音像定位が展開する、ジャズアルバムとしては稀有な録音で是非とも聴いて欲しいアルバムです。
Swing Is Here/Dick Hyman(piano)
リファレンス・レコーディングスのレコーディングエンジニアは、3次元音場再生を提唱した伝説のオーディオ機器メーカー、スペクトラルの技術者でもあるキース.O.ジョンソン博士。
HDCDレコーディング。
3次元音場の展開は数あるジャズアルバムの中でも屈指の1枚。音質もクリアーで透明感が高い。
古き良き時代のスウィングジャズを高音質優秀録音で現代に再現したアルバム。
個性を前面に出す演奏ではなく、スタンダードナンバーをオーソドックスに演奏。
ディック・ハイマンのピアノも泥臭くアクの強い弾き方ではなく、ピアノ演奏も録音もクラシック的。
ロサンゼルスのホテルにあったジャズバーで聴いた生演奏の雰囲気そっくり。過去の思い出が甦りました。
Torch Songs/Eileen Farrell
こちらもリファレンス・レコーディングスの高音質優秀録音CD。
オペラからポピュラーソングまで幅広く活動したアイリーン・ファレルが歌う。
リファレンス・レコーディングスは録音からマスタリング、編集まで全ての行程をキース・ジョンソン博士が最終責任者となる。ハイエンドオーディオの概念の創成期から、新しいオーディオのあり方聴き方を提唱した伝説のオーディオ機器メーカー、スペクトラルの創業者でもあり設計責任者でもある。
音像定位は明確で解像度が高いながらも、かぶりつきで聴くような録音ではなくステージ全体の音場や雰囲気を重視した録音。ジャズバーの末席で聴いているような雰囲気で、ある意味スペクトラルの音質傾向に通じるものがある。
ブルーノートやプレステージ、パブロとはベクトルが異なる優秀録音CD。
Jazz Kaleidoscope
こちらもリファレンス・レコーディンクス社キース.O.ジョンソン博士の手によるHDCDレコーディング優秀録音CD。
収録曲は多岐に渡るジャンルを跨いでいるが、オーディオ的には特にトラック7&12が秀逸。
広大な音場にピンポイントで定位する音像、音場の奥行き共に優秀録音CDに相応しい出来。
トラック7の低域がスカしてしまうか、又は解像度高く明瞭に再生できるかもチェックポイント。
トラック7はジャズなのに曲もオーディオ音場的にもアラン・パーソンズぽい。
収録もライブ、スタジオ、ホールと多岐に渡る。
キース.O.ジョンソン博士自作のアナログ3チャンネルテープレコーダー収録曲も含まれているようだがクレジット無し。聴感でもデジタル録音と聴き分けできないほどアルバム全体でまとまっている。
HDCDレコーディング。
MOVE/上原ひろみ
クラシック曲の録音でも定評のあるテラーク。
広大なDレンジ&Fレンジが、曲や上原ひろみのエネルギッシュな演奏とマッチしている優秀録音CD。
アルバム通しで1日を表現した上原ひろみのオリジナル曲。
ほとばしるエネルギーと、スタジオ録音ながらもライブや即興演奏のような躍動感の好演奏優秀録音CDだが、音楽的には好き嫌いの好みは分かれるかもしれない。
ライナーノーツには録音機材としてオーディオマニアならご存知のEMM LabsやスタジオモニターとしてATC SCM50の記載も。
流石TELARC!
LOVE/綾戸智絵
ジャズはこんな生々しいサウンドで聴きたいですよね。
録音で余計な手を加えない、クレーム対策でこじんまりとまとめない、マイナーレーベル録音の良さが出ていると思う。
friends/綾戸智絵
綾戸姐さんのエネルギー爆発!ダイレクト感のある生々しい録音。
1曲目カントリーロードから綾戸ワールド全開。
関西おばちゃんのエネルギー全開。
マイナーレーベルならではの優秀録音CDでもあります。音場感的に特筆すべきものは無いが、歌声やピアノがダイレクトで生々しい。
2曲目のスピニング・ホイール。アコースティックベースのソロが生々しく高音質なのだが、歌やドラムと重なると奥へ引っ込んでしまうのは残念。
come away with me/ノラ・ジョーンズ
オーディオ・チェック用、試聴用としては、装置の粗を露にするタイプのアルバムではありません。
どんな再生装置で聴いても録音の良さが実感できる定番の優秀録音CD。
録音も良く2002年の発売当時は、オーディオ試聴チェックCDとしても一世を風靡した。
改めて聴き返してみても、決して色褪せることの無いエバーグリーンな大人のためのアルバム。
JAZZや音楽ジャンルの枠を超えた名盤中の名盤。本気で聴くも良し。BGMとして聴くのも良し。多くの人に聴いて貰いたいアルバムです。
但しこのアルバムに関しては再販盤SACDの意味はない。
誰もが知っている優秀録音の名盤ですが、SACD層に過剰な期待は禁物です。
ノラの歌、声の生々しさや実態感が薄れ、解像度や情報量も減っている。高域も伸びてない。SACDの長所が皆無。
ジャケ帯の宣伝文句
✖スーパーオーディオCDで蘇る
〇スーパーオーディオCDで劣化している
https://www.stereophile.com/content/5th-element-26
端的にまとめると、2002年初版オリジナルの録音はADD=アナログ録音デジタル編集デジタル・マスタリング。
編集済み16Bit44.1kHzCD用フォーマットのデジタル音源をSACDで再生できるようにリマスターしている。何故アナログマスターまで遡りSACDフォーマットに再編集マスタリングし直さないのか。SACD層は完全なる制作側の手抜き。
この音で「SACDの音は~」と語ってはいけない。
stereophileは詐欺だと断罪している。
ステレオファイルの記事が書かれた2004年時点でのアルバムセールスは全世界で800万枚。2025年現在3,000万枚のセールスを記録している。
儲かってるのに手抜きするな!
BIG BAND STAGE/角田健一ビッグバンド
ビクター・301スタジオで2010年の録音。マルチマイクのスタジオ録音ながらもB&Kのマイクでスタジオメインエリアの残響成分も収録している。
ライナーノーツの図を見る限り、ギターチムニーのパーテーションを外している。
収録マイク全て(全9社15種)、スチューダーA-820ハーフインチ・マスターレコーダー、プリズムサウンドADA-8 AD/DAコンバーター等、録音及びマスタリング機材を全てクレジットしている。
※5.1chサラウンドはPro Tools編集。
レコーディングのチーフエンジニアは日本音楽スタジオ協会会長兼ミキサーズ・ラボ代表取締役会長の内沼映二氏。
編集の詳細な内容までは公表されていませんが、ビクタースタジオ301の楽器の配置図通りに音像が定位して音場が展開します。推測ですがマルチマイク収録の各音源をPro Tools DAW AAXプラグイン等で位相差や時間差まで含めた丁寧で緻密な編集を行い、音像定位や音場を意識して管理しています。
B&Kマイクで収録したスタジオ全体の間接音や残響の編集処理も不手際が感じられません。
クラシック曲のレコーディングエンジニアや、ハイエンドオーディオメーカーの技術者がジャズの録音を手掛けると、どのようなサウンドステージが展開するのか。
マルチマイク収録でも「こんな音場が展開するミックスダウンも可能なんだよ」という観点を含めて、ジャズの優秀録音CDをピックアップしてみました。
オーディオ的にも3次元音場再生的にも面白いCDが含まれています。
興味があれば是非聴いてみてください。
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