1989年発行オーダーサイクル図鑑
平成元年サイクルスポーツ臨時増刊『オーダーサイクル図鑑』
本棚から33年前のサイクルスポーツ誌臨時増刊号『オーダーサイクル図鑑』が発掘された。
当時の雑誌やカタログなどの資料は処分してしまった物も多いのですが温故知新。
当時を振り返りながら記事にしようと思います。
シマノ7400デュラエース
2022年5月に、またまた値上げがアナウンスされているシマノ。そのフラッグシップ・デュラエースのコンポーネント。
6速から8速まで同時発売されていた1989年当時のデュラエース。
現在では廃れてしまった規格であるボスハブやボスフリーもラインナップされていました。
STIデュアルコントロールレバーは、1989年時点ではまだお目見えしていません。
1990年宇都宮で開催された世界選手権ロードレースで、日本代表選手が史上初めてSTIレバーを実戦投入。
ハンドルから手を放さなくても変速できる!
その衝撃は今でも忘れられません。
多段化が進み12速電動変速R9200デュラエースが発売になった今、7400系デュラエースを改めて見直してみると、、、
33年の時を経て、その技術の進化と共に価格推移に驚きを禁じ得ません。
当時はデュラエースも決して高くはなかった。現在と比較してみれば、、、。
7400系デュラエース品番 | 税抜き価格(1989年当時) | |
リアディレーラー | RD-7402 | 9,500円 |
フロントディレーラー | FD-7402(直付) | 4,800円 |
シフトレバー | SL-7402(8段) | 6,400円 |
ブレーキレバー | BL-7402(ワイヤー類別) | 7,300円 |
ブレーキワイヤー | 1,100円 | |
ブレーキ本体 | BR-7402 | 15,400円 |
ハブ | HB-7400F+FH-7402 | 18,100円 |
カセットスプロケット | CS-7400(8段) | 4,400円 |
チェーン | CN-7400 | 3,700円 |
クランクセット | FC-7402(BB付き) | 25,500円 |
ボトムブラケット | BB-7400 | 4,100円 |
ビンディングペダル | PD-7401 | 24,800円 |
クリップ付ペダル | PD-7400 | 15,600円 |
合計 | ビンディングペダルで計算、ハブ除く | 102,900円 |
当時は完組ホイールが主流ではなかったため、ハブを含めたフルコンポーネント総額は121,000円になります。
しかし今ではハブを含めてデュラエースでフルコンポを揃えるアッセンブリーは皆無とも言えるので、表の中での合計価格はハブを除きビンディングペダルを含めた合計で計算しています。
そして今は、、、
シフトレバーとブレーキレバーが一体となったSTIデュアルコントロールレバーへ。
8段変速から12段変速へ。
カセットスプロケットも当時から返送性能を考慮されていたが、HGギヤからハイパーグライドで更なる進化を遂げている。
そして通称紐変速、ワイヤー引き変速からDi2電動変速へ。
ホローテック中空クランク&BBシャフト一体構造へ。
キャリパーブレーキからディスクブレーキへ。
ブレーキ制動力と前後の変速性能の向上には目を見張る進化がある。技術の進歩は素晴らしい。
しかし現行R9200系デュラエースと価格を比較すると、その価格差は何と約4倍にも!
33年の時を経て、時代の変化を改めて感じます。
80年代のロードバイク、当時のデュラエースやカンパで組んだバイクも処分せずに手元に残しています。
特に安全性に関わるブレーキの性能は目覚ましく進化を遂げ、80年代当時のロードバイクには今ではとても乗る気が起きません。
現代のブレーキからすると、当時のブレーキは制動装置と呼べるものではなく「スピードコントローラー」程度と言ってもおかしくはありません。
性能の向上には目を見張るものがありますが、リアルタイムで当時を知らない若いサイクリストさん達は、この4倍にも価格が跳ね上がったデュラエースに何を思い、どのように捉えているのでしょうか。
諸物価も上がり、その割に日本国内では労働賃金は上がっていない。ハイエンドバイクの存在位置というか、可処分所得に於けるハイエンドバイクの立ち位置が、当時と今とでは大きく変わってきていると思うのです。
諸外国では、それ以上に賃金も上がっているので、日本だけが取り残されている現状。
何とかならないものでしょうか。
自転車道 総集編 vol.1 (ヤエスメディアムック641)1989年当時のフレーム
『オーダーサイクル図鑑』のタイトル通り、当時は未だ主流であったクロモリフレームのハンドメイドビルダーが数多く紹介されて輝きを放っていました。
フレーム素材の中心がアルミやカーボンに変わっていき、ハンドメイドビルダーから大手メーカーの完成車にロードバイクの主流が変遷していく時代の始まりだったように記憶しています。
今でも現役で作り続けているビルダーもいれば、ケルビムやレベルのように代替わりして続いているフレームビルダー。
現弱虫ペダルサイクリングチーム入部正太朗選手の父IRIBEのように、惜しまれながらも亡くなってしまったビルダーも・・・。
既成の吊るしクロモリフレームで6万円台後半位から。ランドナーやスポルティーフのように加工にこだわらなければ、10万円以内でもフレームフルオーダーが可能だった時代。
自転車メーカー各社もオーダーシステム販売に力を入れており、今でも続くブリヂストンとパナソニック以外にも、丸石、アラヤ、ミヤタ、ニシキ、フジ(アメリカ資本となった現在のFUJIとは異なる)が紙面を飾っていました。
アルミやカーボンが市場に出始めた当時、カーボンフレームはモノコック製法ではなくパイプをラグに接着する工法でした。
1989年当時のフレーム価格といえば、、、
パナソニックオーダーシステム(POS)の例を挙げると単色塗装でカーボン及びチタンフレームは共に157,000円(税別)、アルミフレームは87,000円(税別)、クロモリフレームは87,000円(税別)の価格となっています。
カーボンクロス単体の強度や剛性も現代と比較すると劣り製造方法も異なるとは言え、フレームも今と比較すると安かった。クロモリフレームに限っても33年間の間に大きく価格は変わっています。
リムやハンドルバーなどの部品にもカーボン製品が普及していなかった当時、デュラエース完成車でクロモリフレームなら20~30万円ほど。
更に時代を遡って80年代前半なら、20万円でデュラエース完成車を買ってお釣りが来る時代もありました。消費税も無かったし、、、。
カーボンやチタンフレームでも40万円程度でシマノ・デュラエースアッセンブルのハイエンドバイクを手に入れることができた時代です。
当時の広告
オーダーサイクル図鑑だけあって小売り向けではハンドメイドビルダーの広告が多い。
また自社でフレームを製造していなくてもクロモリオーダーメイドを受け付けていたショップ、横尾双輪館のHOLKS、セオサイクルやミラノ館などの広告も目立っています。
33年前には既にセオサイクルには船橋ららぽーと店もあったとは!改めて懐かしさと共に驚きました。
そして完成車メーカーや部品メーカーの広告は、デュアルコントロールレバー発売前ということもあってブレーキ系統ではダイアコンペも元気な様子。
サンツアーのブレーキはダイアコンペのOEMだったと記憶しています。
スギノ・テンションディスクやARAYAディスクホイールの広告が懐かい。
サンヨーのライトやサイクルコンピュータの広告も!
マウンテンバイクは明瞭期。サスペンションフォークもディスクブレーキもVブレーキすら無く、ディオーレXTにはカンティブレーキとUブレーキがラインナップされていました。
国内ハンドメイドビルダーと国内メーカーのオーダーシステム中心の増刊号なので、輸入車の広告は少ないのですが拾ってみると、、、
2022年35万円(税別)のCOLNAGO MASTERが当時は168,000円と現在の半額以下。
当時の輸入フレーム価格をピックアップしてみてもMade in ITALYのハイエンドフレームが10万円台から。チネリ・スーパーコルサ(OEM中心となった今のチネリとは格が違いました)でも20万円そこそこの値段。
1桁万円の外車フレームも数多く、カンパ・スーパーレコードフルセット完成車で組んで40万円でお釣りがあった時代もありました。
自転車道 総集編 vol.2 (ヤエスメディアムック660)温故知新
競技用機材としてフレームもコンポーネントも大きく進化を遂げています。
コンポーネントはデュラエースにスポットを当てて記事にしましたが、アルテグラや105も大きな進化を遂げ、趣味で走っているサイクリング用途ならティアグラやソラでもコスパの良い充分な性能を備えています。
まだまだ日本ではメジャーと言えない趣味であるロードバイクやサイクリング。
当時はショップを中心にしたクラブで練習に熱心でないサイクリストもレースに参加したり、逆にレースガチ勢もポタリングやバーベキューイベントに参加したりと和気あいあいとした雰囲気がありました。
今よりもずっと珍しかった女性サイクリストは”スポーツバイクに乗っている女性”と言うだけで歓迎ムード。
レースガチ勢や趣味として入れ込んでいるサイクリストのほとんどは、カンパスーパーレコードやレコード、シマノ・デュラエースで組まれたバイクに乗っていました。
SISインデックスシステムが普及してきたとは言え、まだカンパのシェアも少なくなかった時代でした。
そしてシマノのライバル会社サンツアーもまだ元気だった頃。
アルテグラやサンツアーのセカンドグレード、スプリント9000は当時のクラブ内では少数派でした。
30数年の時を経てコンポーネントやバイクの価格も大きく変わり、徐々にではありますがサイクリングやロードバイクの世間での認知度も上がり趣味としても普及。その楽しみ方や乗り方も多様化しています。
僕の周りでは当時から今に至るまで、初心者や女性サイクリストを見下したり、バイクの値段やグレードで見下すような人はいなかった。
皆で仲良く楽しくが基本で当たり前の時代だったのです。
今のように気の合った少人数のグループで走るだけに限らなかったこと。ショップのスタッフや仲間意識の強いベテランサイクリストがグループライドで目を光らせていたことも大きかったように思う。
『教えたがり』は当時から居たけれど、マウントは無かったような・・・
本気度の高いレーシングチーム内では、体育会系的な厳しさも多少はありましたが。
こちらは競技の世界ですから当たり前のこととして捉えていました。
マウントという行為
SNSでもリアルな交友関係でも話題になるマウントと呼ばれる行為。
言われる側にとっては嫌なものです。
僕の周囲に実在しないので想像を交えての意見となりますが、
キャリアの長いベテランサイクリストは、この記事に書いた時代=ちょっと頑張れば誰もがデュラエース完成車を手に入れることができた時代を引きずっているサイクリストも少なからずいるのではないでしょうか。
当時と認識を変えることが出来ていないのではないか。マウント行為はベテランサイクリストに限った話ではないようですが。
当時の20万円と今の100万円オーバーでは貨幣価値は大きく違います。
優越感やいじめに起因するような、人を区別し見下す感情を拭いきれていないようにも思えます。
サイクリングに限りません。どんな趣味でも初めからそのジャンルで最高額のアイテムを揃える人は極々稀でしょう。
1流企業に勤務し収入がありながらも、1桁万円の自転車で家族でサイクリングを楽しんでいる人も知っています。
奥の深い趣味であるほど、知識を深める為には年期が必要なものです。
サイクリングの楽しみ方も、機材に関する入れ込み方も人それぞれ。
サイクリスト誰しもが限界までの性能を求めて機材の比較検討をしている訳ではありません。
サイクリスト皆がレースに参加して速さを競っている訳ではありません。走行距離や練習量を比較して見下す行為もおかしな話です。
競技者同士で「こうした方が良い」は向上の為に必要なことではありますが、、、。
レーシングチームの練習では、集団が分かれることはやむを得ない。
小集団内でいっぱいいっぱいになっている人がいたら先頭交代免除であったり、後方グループに道順が分からない人がいたらコースの要所で止まって待っていたり。
実力差があるのである程度の分断はトレーニングでは仕方のないこと。マウントのような言動も無ければ、逆に遅い人が卑屈になるようなことも無く、コミュニケーション的にも問題は無かったです。トレーニングはサイクリングとは違います。
しかしバイクの価格だけでマウントは言語同断!
世の中には人を見下してバカにしていないと、自身のアイデンティティを保てない人が少なからず存在します。
優越感を得て自分の優位性を誇示したいが為に。
マウントを取られたとしても、聞き流して気にしないことも必要だと感じます。
他人に価値観を押し付けたり、強制してはいけないと思うのと同時に、キャパというか許容範囲が狭くて傷つきやすい人が増えているようにも思います。
自転車に限らず仕事の上でも人間関係全ての場面で。
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