シマノ・ホローテック2クランク割れ問題について

2023年6月11日

軽量化と高い剛性を両立させたシマノのホローテック2中空クランクセット。

ロードバイク用コンポーネントでは105以上のグレードに、MTBコンポではSLXから、グラベルコンポGRXにはR810に採用されています。

”自転車界のインテル”とも言われるシマノコンポーネントは、その高い普及率で多くのスポーツバイクユーザーに愛用されている訳ですが・・・

少なからず目にするのがホローテック2クランクが割れて折れてしまうトラブル。

原因と仮説・推測

12速デュラエースR9200シリーズの左クランクは溶接で作られています。
R9200デュラエースの左クランクを除けば、全て接着構造のシマノ・ホローテック2クランクセット。

僕自身はシマノ・ホローテック2クランクが割れたり折れたりといった経験はありません。

ロードバイク用コンポで割れる報告が散見する以前から、ショップでMTBコンポ特にXTRでは少なくないとの話を聞いていました。※M950系中空クランクは接着ではなく溶接構造。
何本か実際に折れたホローテック2クランクを見せて貰ったこともあります。

オフロードでの過酷な使用環境で使用され、ドロドロになり水洗いが当たり前のマウンテンバイク。

肉薄で軽量化されたクランクです。特にXTRやデュラエースは極限までの軽量化がされています。ペダルが走行中に岩角などに強く当たって接合部の接着面に微細なクラックが出来る。

そのクラックが使い続けているうちに徐々に広がり、応力分散が上手くいかずに集中してしまい最後に割れてしまうのだろうと推測していました。

ロードバイクでも同様に縁石などにペダルをぶつけて、瞬間的に強い衝撃が加わることが原因の発端なのではないかと。

原因は中空クランク内部の腐食?

折れたホローテック2クランク内部の検証から、中空クランク内部で腐食=錆びが発生している。

原因はガルバニック腐食であるとする海外のブログ記事とYouTube動画。

ガルバニック腐食とは異なる種類の金属、例えば鉄とアルミなど異種金属同士が接触した状態で水分や溶剤などの電気が流れやすい環境や腐食環境下では、イオン化傾向が大きい方の金属の腐食速度が急激に増大する現象。

中空クランク内部に水分が侵入してしまえば錆びは発生するので『ガルバニック腐食』だけに囚われ過ぎてしまうと、全体像を見誤ってしまいそうな気もします。

ペダルやクランクシャフトは異種金属ですが、中空クランク内部に直接接触している構造ではありません。

この記事内での実例では・・

1.中空クランクの裏蓋に相当する接着面の接合部が剥がれる例

2.チェンリングを取り付けるスパイダーアーム側の接着面が剥がれる例

2つの事例が紹介されています。

接着面が剥がれてしまったら・・・
その隙間から雨天走行や洗車で中空クランク内部に容易に水が侵入してしまう。
そして中空クランク内部に錆びが発生すると、劣化が進行して割れてしまう。
と結論を出しています。

割れるのが嫌だったら105かROTORのクランクを使えとも。

動画でははっきりと接着面の剥がれが目視できます。

しかし、肉眼では確認できない小さな剥がれや隙間が接着面に発生してしまう事も考えられると思われます。

髪の毛1本程の小さな穴からでも水分は侵入してしまいます。

ホローテック2クランクの接着面に僅かでも隙間や穴が発生した状態で、ジャバジャバ水洗い泡立ち洗車をすれば中空クランク内部への水の侵入を促しているようなもの。洗剤もいっしょに・・・。

シマノ FC-R8000 53X39T 170mm 11S IFCR8000CX39
シマノ FC-R8000 53X39T 170mm 11S IFCR8000CX39

現時点でのまとめ

僕自身ホローテック2クランク割れの経験は無く、現時点で仮説は立てられても検証が出来ない。結論は出せません。

割れ方も接着面で綺麗に剥がれるケースもあれば、最初のきっかけは不明ですが接着面以外で折れている事例もあり、パターンは1つだけではないようにも思えます。

界面剥離か層内破壊なのか材料破壊なのかも現時点で証明された資料は無い。

剥離の原因とプロセスのエビデンスが不足しています。

パワーメーター付きだと折れる前に『何度も校正してもズレる。数値がおかしい』状態になると言う報告もあります。
この時点で接着面にクラックが入っていると推測できます。

この動画内で様々なパターンでの折れ方が画像で出ています。

温度低下に起因する中空クランク内部の結露から、クランク内部の接着剤の劣化やアルミに錆びが発生し・・・との予測もありますが、高度1万m外気温マイナス50~70℃にもなる飛行機のハニカムパネルが温度低下で劣化するなら空中分解しとるわw。

冬季は氷点下でのライドが当たり前の北欧などでクランク割れが多発しているなんて聞かないし。

あくまでも現時点での推測からの予防ですが

現時点での推測からの予防

・取扱注意:ペダルを縁石にぶつけたり、瞬間的に強い衝撃が加わるような状況を避ける。

・クランク接着部に隙間が発生すれば容易に中空クランク内部に水が浸入してしまう。雨天走行や水洗い洗車は出来るだけ避ける。

またひと口にホローテック2クランクと言っても年式やモデルによって構造も異なっています。

MTBコンポやグラベルコンポは中空BBシャフトが右クランクから見える。

スパイダーアーム別体のダイレクトマウントXTR。

中空BBシャフトに水が浸入すると、中空クランク内部に伝わって水が浸入し易い構造のモデルもあれば、蓋になり中空クランク内部にはBBシャフト側から水が浸入しない構造のモデルもある。

・・・など

個人の力では実験や再現が難しく、結論を出せる事例も少ないです。

あくまでも現時点での仮説ですが、初期のホローテック2クランク割れの報告がMTBコンポに多かったことから、ペダルを岩角や縁石にぶつけてしまい、瞬間的に強い衝撃が加わり接着面に微細な隙間やクラックが発生する。そこからクラックが進行して最後に折れたり割れたりする。
一旦クラックの入ったクランクは、雨天走行や洗車で中空クランク内部の錆びと割れが急激に進行する。

動画内でも指摘されているように、何かのきっかけで中空クランク内部に錆びが発生、接着剤や接着面に悪影響を与え剥がれてしまうケース。

折れ方(剥がれ方)に様々な例があるように、根本的な原因も1つではないように思えます。

現時点で原因は特定できませんが、ホローテック2中空クランク接着部分に極僅かな穴が発生してしまった状態、実用上では不具合は体感できない、異常を感知できない状態だったとしても・・・

水洗い洗車、泡立てた洗剤洗車はクラックの入ったホローテック2クランク内部の錆びを急激に促進させてしまい、クランク折れを進行させてしまうでしょう。
シマノ・ホローテック2クランクへの不安を煽る記事ではありません。繰り返しますが僕自身FC-9000デュラエースとFC-R7000アルテグラクランクを問題なく使用継続中です。

今後も情報収集を継続し考えていきたいと思います。

シマノ(SHIMANO) FC-R8100 170mm 50x34T 2x12S
シマノ(SHIMANO) FC-R8100 170mm 50x34T 2x12S