
2025年5月31日~6月1日の2日間に掛けて開催されたアナログオーディオフェア2025ニ行ってきました。
会場は秋葉原の損保会館。
会場での音で全てを判断して「この製品はこんな音」と決めつけるつもりはありません。
床面積に対して天井が低い損保会館の会議室。音響特性はお世辞にも良いとは言えません。
低域の反響は大きく音像はどうしても大きめになってしまいがち。音場も精密緻密に展開するまでには至らない。
その条件で前日に搬入して半日でセッティングする難しさ。
個人のリスニングルームや専門店の予約試聴とは異なり、ベストポジションで聴けるとも限らない。
使いこなして追い込めば心に沁みる納得できる音になるな、と可能性を感じられる音としての感想になります。
音像音場以外の解像度や情報量、スピード感や演奏の熱量が感じられるか等での「良い音」としています。
試聴環境が完璧とは言えないので、揚げ足取りのようなインプレはしません。
アナログ機器や真空管アンプが中心の出展の中、比較的時間をとって試聴したメーカーを中心にレポート。
AIR TIGHT
真空管アンプメーカーとして40年近い歴史を誇るエアータイト。
正式な社名はエイ・アンド・エム株式会社。

スピーカーはパラダイム・ペルソナ7F。
それにしてもカスタムスピーカーメーカー以外はペルソナ比率が高かった。今イケイケの注目のスピーカーですからね。
パワーアンプは211シングルのATM-2211J、EL34PPのATM-1_2024Edition。
プリアンプはATC-5s。
アナログプレーヤーはトランスローターZET-3TMD、トーンアームはGLANZLAB刀(MH-12KATANA)、カートリッジはマイソニックラボ・シグネチャー・ダイアモンドの組み合わせ。


第1印象はハイスピード且つクリアーで高解像度。情報量も多く温度感が高くて演奏の熱気も感じられる。
めちゃ好みの傾向な音です。
アナログレコードや真空管アンプにネガティブな先入観を持っている人にこそ聴いて欲しい鮮烈なサウンドでした。
海外でも定評があり評価が高いエアータイト。社長は外国人来場者と違和感なく英語で話してました。
「このレコードは5€で買った」とか「国外のアーティストですが録音は築地」など蘊蓄やエピソードを踏まえてのデモは音楽やオーディオに対する愛情や思い入れが感じられ、好みではないジャンルやアーティストの曲も違和感なく聴けてしまう不思議。
音楽鑑賞やオーディオの先人の話が聞けるのはホント面白い。良い刺激になるし『試聴する』だけではない楽しい時間が過ごせました。
SAEC
トーンアームを始めアナログ関連アクセサリーや各種ケーブル類を製造販売。1974年創業の50年の歴史を誇るサエクコーマス。

SAECは2024年4月1日より英ハーベスの輸入代理店になっています。
試聴デモのスピーカーは新製品HAEBETH C7ES-3 XD2
創業50周年記念モデルのグランドスタビライザーSGS-100も接続されていました。
イケダサウンドラボとカジハララボMUTECHも共同出展。

イケダはトーンアームIT-407 SSの展示及びデモ試聴のみ。カートリッジの出展が無くちょっぴり残念・・・。
カンチレバーレスの先代作しか聴いた事がないのです。
ターンテーブルはLUXMAN PD-191ALにイケダ&SAECダブルアーム仕様。
アンプはエアータイトATC-5s & ATM1 2024 Edition。
試聴ソースのアナログレコードはヴァンゲルダー録音のブルーノートジャズ、オペラ、カラヤン指揮ベルリンフィルからTOTOやらディープパープル、アランパーソンズプロジェクトまでさまざま。
BEST OFSAECでもソフトの録音背景や蘊蓄を解説しながらのデモは興味深く楽しかった。


「カラヤンは独グラモフォンでは、生涯たった1人の録音エンジニアを指名していた」
SAECが考える音場として「オーケストラの配置、左右は勿論前後や上下も」ヴァンゲルダー録音のブルーノートジャズでは「このレコードは天井高さ4mのスタジオで録音。曲の最後で残響が高く上がり、それが徐々に上から消えていく」このような音場が正確に表現できるオーディオ機器を念頭に製品作りをしているそうです。
ロック系LPは「米国オリジナル盤よりEU盤が音が良いと思う。電圧が関係しているのではないか」などなど。
このような解説有りながらのデモ。正直言ってカラヤンは大嫌いなのですが、そんな僕個人の好みなど無関係に聴き入ってしまいました。
本当に音楽やオーディオ好きな人が作る製品って、それだけで信頼感が生まれます。
デモでのサウンドも温かみがありつつ濃密。オールジャンルでスピード感や音場感、解像度も伴った良い音でした。
今更ですがロック向き、ポップス向き、ジャズ向き、クラシック向き、ヴォーカル向きなどの分類は過去のものです。
そのような限られた音楽ジャンルの適したオーディオ機器もありますが・・・。
MUTEC MCカートリッジ制作の話も面白かった。
DS Audio
世界唯一オンリーワンの光電型カートリッジを製造販売するデジタルストリームのブース。
デモ用スピーカーはソナスファベール・アマティG5

このブースの音も良かった!
DS Audio光電型カートリッジは初めて聴いたのですが、精密緻密な高解像度でありながらも不自然にならない。音楽性を失っていない好バランス。
自分のものとして追い込めば更に情報量が多くなり、音場感は精緻になるかもしれない、という可能性も感じられました。
このような製品は理論先行で頭でっかちに陥りがち。実際に聴くと残念な結果になる事も少なからず、といった先入観を覆す良い音でした。
LYRAなどの高解像度ハイスピード系統カートリッジの延長線上にあるサウンド。現代最先端を行くアナログサウンドのひとつだと感じられました。
アナログはもう少し落ち着いた丸い音で聴きたい人もいるかもしれませんが。
傾向として僕の好みにドンピシャでした。


グレードが変わってもカートリッジの基本構造は同じ。針先形状とカンチレバーの材質の違いのみ。
偏心補正スタビライザーES002


アナログレコードには避けられない宿命として偏芯があります。
JIS規格では300ミクロン以下に定められています。しかし長年のレコード再生で偏芯が拡大して広がってしまうことも。
デモの比較試聴では偏芯350ミクロンのアナログレコードをES-002リファレンスで偏心を20ミクロンまで補正。
確かに音場音像が精密になった印象がありましたが、元々は偏芯300ミクロン(以下)のアナログレコードを普段から聴いている訳で、補正前の音も特に違和感は感じられない。
音場音像に関しては詳細に分析可能な試聴環境でもないので、結論は自分の中では保留するに留めておきます。
デモでDS Audioの中の人の話にもありましたが、1981年に発売されたナカミチTX-1000及び1983年発売ドラゴンCT以来の、実用化されたアナログレコードの偏芯補正システムになります。
PDN パラダイム・ペルソナ
パラダイムやトーレンスの輸入代理店PDN、ゾノトーンの前園サウンドラボ、オーロラサウンド、ズートコミュニケーションの共同ブース。

このブースも良い音でした。
スピーカーはパラダイム・ペルソナ5F
長時間の視聴はしなかったので、ケーブルや個々の機材への言及は避けておきます。
但し・・・やっぱりペルソナは万能で良いスピーカー。
ゾノトーンは同じグレードのスピーカーケーブルで、シングルとバイワイヤリングと変更しながらデモをやっていました。
まとめ
フェア参加者はみたところかなりのベテランのアナログファンやオーディオマニアばかり。
残念なことに若いアナログファンは、ほぼ見当たらない。
若いオーディオファンにも、このようなアナログレコードや真空管アンプのネガティブな先入観を覆す音を聴いて欲しいと切に願います。
百聞は一見に如かず。
懐古趣味ではない最先端を行くアナログレコードのサウンドを。
自宅でのオーディオサウンドの構築も、自分自身の内面の音楽の好みも、このような経験を積み重ねることによって構築されていくと感じています。
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