LOOK 785 HUEZ RS

2019年7月1日

LOOK Bikes

LOOKの歴史と印象

生産台数が少ないのか、輸入量が少ないせいなのか。決してメジャーではないけれど、誰もが知っているLOOK。近年はジャイアントやメリダ等の台湾メーカーの台頭、そしてスペシャライズド、TREK、キャノンデールに代表されるアメリカン・ブランドの販売戦略が優勢の中、独自路線を貫く1951年創業のフランスの老舗自転車メーカーです。

1984年にビンディングペダルを世界で初めて市販し大流行。カーボンフレームを手掛けたのも早く1986年から製造を開始。当時絶大な人気と実力を誇ったベルナール・イノーとグレッグ・レモンが、ツール・ド・フランスでワンツーフィニッシュを達成!一世を風靡しました。

モンドリアンカラーのロゴもカッコイイ!

個人的にもLOOKは好きなメーカーなのです。しかし・・・

フレームは独自規格ZEDクランクとBB65のせいで、暫く食指が動きませんでした。変速性能が悪かったり、メンテナンスに手間を掛けるのはいやなので・・・。アダプターを使うのも趣味じゃない。BB30も嫌だ。795もブレーキは普通になったとは言えメンテナンス大変そうだし・・・。独自路線過ぎて敬遠していました。

そこにツール・ド・フランスで幾多の名勝負が繰り広げられたラルプ・デュエズ(L’Alpe -d’Huez)峠の名を冠した785 HUEZが登場!シマノクランクが使えるPF86仕様がある!!

買ってしまいました。LOOK 785 HUEZ RS PF86

LOOK 785 HUEZ RS

シマノクランクが使えるPF86仕様です。ZED2クランクは個人的には全く眼中にありませんでした。

税別38万円也(購入当時)。ハイエンドモデルとして他メーカーのバイクと比較しても安い。38万円が安いのかどうかはともかくとして・・・。

2023年モデルよりリムブレーキ仕様が廃版となり、ディスクブレーキ仕様のみのラインナップになりました。

サイスポのLOOK 785 HUEZ RSインプレッション

サイスポ安井さんのインプレがとっても気になっていたんですよ。それも悪い方向に。

安井行生のロードバイク徹底評論第11回 LOOK785

LOOKのイメージとは全く異なるインプレッション。「強烈なダイレクト感」「操舵が異様にクイック」「ピナレロDOGMA F10に匹敵する貧脚お断り高剛性」などなど。

結局、ルック・785ヒュエズRS ZED2とは、どんな自転車なのか。
近年珍しい一点突破型。上りかつ高負荷下での反応は鮮烈至極。過激なハンドリングと剛性感が、高負荷下の登坂路においてカチリと噛み合う。調子がいいときはどんどん踏める。どんどん回せる。だが、脚はそのぶんきっちり削られる。貧脚お断り度合いで言えば、ドグマF10に匹敵するフレームだ。
爆売れしているという785ヒュエズRSの本当の性能を目一杯引き出せる人は、そう多くはないだろう。もちろん自分はその他大勢である。今の筆者にとっては、本当に体調のいいときしかこれをこれらしく走らせることはできない。

衰えを隠し切れない、まったりライドに転向した僕には、全く不向きなバイクじゃないですか。軽くて扱いやすくて、貧脚にも優しいロードバイクが欲しいのに。

そして、乗ってみたところ・・・

僕の第1印象
 
 

ピナレロ・ドグマとは全然違う!脚が削られるようなバイクじゃない。貧脚お断りバイクでもない。乗り手に寄り添う優しさのあるバイクでした。強烈な加速がありながら、このバランスは凄い!
ドグマF10の爆発力も凄いですけどね。

安井さんはZED2仕様だから、こんなインプレになったのだろうか。最後にクランクをカンパに変えたら印象が変わったとは書いているけれども。しかしクランクの仕様とは無関係な、ハンドリングの印象も僕とは全く異なっている。
ZED2は乗ったこと無いけれど、クランクが違うだけでこんなにも印象が変わるものなのかなあ?軽量バイクに超軽量フロントホイール履かせると、ハンドリングの印象は変わる。ある程度の重さのあるホイールの方が、どっしりとステアリングが安定する感覚はある。しかし、それはホイールに起因することでフレームの特性ではない。

Well, the ride quality is as sublime as before. It is incredibly comfortable and incredibly springy – as if potential energy has been trapped between the nano-layers of ultra-high-modulus carbon, of which five different types are used.

乗り心地は以前と同じくらい崇高です。 それは信じられないほど快適で、信じられないほど弾力があります。潜在的なエネルギーが5つの異なるタイプが使用されている超高弾性率カーボンのナノ層の間に閉じ込められたかのように。

Read more at https://www.cyclingweekly.com/reviews/road-bikes/look-785-huez-rs-disc#bWauMgxXwAQ0zibQ.99

海外メディアのインプレッションでも、快適性や振動吸収については絶賛記事がほとんど。国内の販売店で785 HUEZ RSを乗り込んだスタッフインプレを見ても、脚に応えない、振動吸収性は良いという記事がほとんどを占めている。

安井さんはLOOK 585⇒クロモリ⇒Timeの愛車遍歴。しなりがあって適度なバネ感のあるフレームが好きなのだろうなと想像します。

マイナーチェンジ

2021年10月追記

2018年度モデル発売以降、カラーリングの変更のみでモデルチェンジされていないLOOK 785 HUEZ RS。

しかし毎年カーボンレイアップ等が見直されており、年度を追うごとにマイルドに柔らかい乗り味にマイナーチェンジが施されています。

「剛性の塊」「じゃじゃ馬」とまで言う人もいれば「適度な剛性感」「バランス良し」と僕のように感じる人もいる。
そして僕は試乗したことはありませんが、最新モデルでは「柔らかい」「しなやか」とまで感じている人もいる。

インプレの印象に個人差があるとはいえ、この大きな印象の差は製造年度による違いも大きそうです。

LOOK 785 HUEZ RSインプレッション

LOOK 785 HUEZ RS

軽い!早い!快適!乗り易い!気持ちいい!衝撃的でした。

一点突破型ではない。ヒルクライム特化バイクでもない。もちろん登りは得意とするところだけれども。過激な剛性感もハンドリングも無い。脚が削られるような自転車では断じてない。

細いシートステーにあえて剛性を落とした12t&24tカーボンを使っているため、アスファルトの細かい振動を凄く吸収していて、ハイエンドバイクに中では振動吸収性はバツグンに良い!疲れない。
ペダリング入力に対しても、ヤワじゃないのにイヤになるような過剰な剛性感がない。貧脚お断り度合いで言えば、ドグマF10とは比較にならない位万人に優しい。

尖ったバイクじゃない。登坂性能は折り紙つきですが、それだけではない。バランスの取れた優等生。平坦路の高速巡行は最新エアロバイクには敵わないけれど、総合性能の優れた万能型のオールラウンドタイプ。これほどトータルバランスに優れたフレームは他にないのではと思う。

誰もが乗り易いと感じる、これこそがLOOKなんだ。乗りこなせるものなら挑んで来い!みたいなバイクとは全く違う。このトータルバランスの良さと懐の広さこそがLOOKの特徴だと思う。
頭でっかちが設計室の中だけで考えた自転車とは違う。気持ち良くて楽しくて官能的。物理的に軽くて早いだけの自転車じゃない。
間口が広いと言うかキャパシティが広いと言うか。脚が売り切れた時に踏めなくなって失速してしまう過剰な剛性感が全くない。

但し柔らかくしなって、そのしなりをバネのように推進力に変えて進むタイプではない。同じフランスのバイクで比較されがちだけれど785 HUEZとタイムはフィーリングは全然違う。
ホイールで言えばナローリム時代のカンパニョーロG3ボーラのようなフィーリングはない。ペダリングに対しての剛性は高い部類。剛性は高いのだけれど、全くたわまない剛体のような感覚が無く、乗り手に優しい広いキャパシティがある。
硬いのだけれど脚が削られないというか、踏み込んだ時に反発を感じ過ぎない。剛性は高いのだけれど過剛性と感じさせないフィーリング。

しかし旧世代LOOK愛好者からすると、しなりを生かして進んでいくタイプではない。剛性感や味付けが異なっているので違和感を感じる人もいるのかもしれません。

中の人の解説によると、785 HUEZ RSはLOOK歴代モデルと比較するとフロントフォーク~ヘッドチューブ周辺~ダウンチューブ~BB周辺にかけての剛性はもっとも高い部類だそうです。
BBをしならせるタイプではないために、人によって評価が変わってしまうことがあるのかもしれません。

あえて言えばどっしり構えて安定しているバイクではないし、幅の狭い平均台のように感じる人はいるかもしれない。この点で好みが分かれるところかもしれない。
どっしり=俊敏性に欠けるということでもあるし。

重量の事だけではなくて乗ったフィーリングが軽く反応がバツグンに良くて、速度域を問わず気持ちよく進む!もちろん加速とヒルクライムは得意とするところ。
軽量ホイール履かせれば、即ヒルクライム決戦用バイクになる。だからといってヒルクライムだけに特化した特殊な味付けではない。平坦のまったり巡行ライドでも、乗り心地は良いし安定感あるし。
長距離を走っても疲労が少ない。

シッティングでゆっくり流しているペダリングでも、ダンシングでの全開加速でも、直線でもコーナーでも、登りでも下りでも、全方位に不自然さや違和感のない懐の広さ。鋭い加速の切れ味を見せながら、まったりライドでは快適性も見せる。そして楽しく気持ちいい。凄いぞコレ。

舗装の荒れた道路でもバツグンの振動吸収性の恩恵で、バイクが暴れないし跳ねないので疲労も少ない。この扱いやすさと乗り心地の良さで、ロングライドにも適している万能型のバイクだと思う。
但し車重が軽いのでコンチネンタル・グランプリ4000SⅡなどの硬いタイヤで空気圧が高いと跳ねて暴れてしまう。タイヤで振動を吸収させないと跳ね易い。乗り心地の良いタイヤを履かせると良いと思う。25Cもお勧め。
ミシュランやMAVICでは体重を基準にした適正空気圧が推奨されています。
高すぎる空気圧で乗っているサイクリストが多いと思う。荒れた路面を高圧でポコポコ跳ねながらの走りは、走行抵抗も増えているという測定データもあります。

25Cタイヤが普及してきたこともあり、高すぎる空気圧で乗るメリットはないと思う。0.2bar単位くらいで空気圧を変えて試してみる事をお勧めします。体重64kgの僕は25Cクリンチャータイヤの場合、フロント6.4Bar、リア6.8Barにしています。

軽くて抜群に反応が良いのに、脚が削られるような過剰な剛性感はない。このまとまりの良さ。バランスの良さ。

LOOK 785 HUEZ RS PF86は総合性能の優れた究極のオールラウンダー。ヒルクライムレースで優勝目指す人だけの自転車でもない。早く走ってもマイペースで走ってもいい大人の嗜み。まったりロングライドでも使える。癖のあるじゃじゃ馬ではありませんでした。

ジオメトリー

Sサイズではヘッドアングル71.8度。フォークオフセット50mm。トレール58.5mm。フロントセンター585.4mm。

いい感じじゃないですか。このスケルトンでハンドリングが機敏になる訳がないっす。癖がなくてバランスの良い無難なジオメトリー。また、ジオメトリー全ての寸法を公表していないメーカーもある中で、LOOKは漏らさず寸法を公表しているところにも好感が持てます。
でもヒルクライム、特にダンシングの軽快感を演出するためかハンガードロップは65mmと決して大きくはありません。僕は安定感のないバイクとは感じませんけれど、車両重量の軽さとこのBB下がりのために、ヒラヒラ感というか、挙動が敏感に感じてしまう人もいるかもしれません。

安定感がありつつも重くならないステアリング周りのジオメトリー。フロントセンターもしっかりと確保されている。フロントセンターやトレールが短いとレースには良いけれど、機敏になり過ぎたり、サイクリングロードのアンダーパスでのUターンのような急転回で気を遣ってしまうのです。

シートアングルが74度と寝すぎていないところもいい。リーチも380mmを超えると僕にはちょっと厳しい。ヘッドチューブが長めな事もあり、Mでは乗れなさそう。Sサイズに決めました。

785はヘッドチューブが長い。しかしヘッドチューブの長さから想像するほどスタックは高くない。

カタログスペック上のヘッドチューブはSサイズで142.1mmもあるけれど、ヘッド小物下側のベアリングはヘッドチューブの奥の方にセットされ、組むとヘッドチューブはフォーククラウンに覆いかぶさるようになる。
ヘッドチューブ+フォーククラウンの実質的な高さ=スタックはそれほど高くない。想像していた程にはハンドルは高くなりませんでした。計算上では10mmコラムスペーサーを1枚減らすだけで済んでいます。

ポジション出しは、この方法で行いました。

LOOK 785 HUEZ RS愛車となってからの感想

LOOK 785 HUEZ RS採点レーダーチャート

振動吸収性は良く快適性も高い。不満は全くありませんが、RSではない785 HUEZ PF86の方が快適性は高いであろうと言うことで、あえて厳しく8点にしています。踏み込んだ時の加速レスポンスは凄くいい。

但しまったりゆったり低重心のバイクではありません。

高速巡行性は最新のエアロバイクには敵わないので、この点数に。

ステム、シートピラー、ボトムブラケットに特殊な規格が使われていない。僕の主観ではJISとイタリアンのねじ切りとBB86以外は”特殊”に分類される。ダイレクトマウントのブレーキも、個人的に好きではない。
ダイレクトマウントは整備性が悪いと思う。ハンガー下のリアは引きが重くなっている場合が多いようだし。

シートピラーは27.2mm丸パイプの極々標準的なもの。交換もグレードアップも自由自在。BB86規格のボトムブラケットも、シマノが推奨している唯一の圧入系BBだけあって、選択肢が多く信頼性も高い。
特殊な部品は交換のときに困るから。BBも耐久性重視でトラブルや交換頻度は少ない方がいい。

初期型のトップチューブ後方から出てくるリアのブレーキワイヤーも、標準的な位置に改良された。

組付け部品に対してもユーザーフレンドリーになっている。785 HUEZ RS PF86は、走っても整備でも乗り手に寄り添ってくれている。

ディスクブレーキも、僕の使い方ではロードバイクには必要ないと判断しています。現時点では、という前提条件が付きますが。シマノのコンポーネントが次期モデルチェンジで、12速はエンド幅142mmのディスクにだけ対応、となったらメカとして物欲が湧いてきてしまうかもしれない。
XTRを見るとロードでも同じになりそうな予感・・・。そうなると、フレームからホイールから丸々1台組まないといけないので、お金ないよー!すぐには買えないよー!となるだろうな・・。

ケーブルのフル内装も整備性を考えると僕には手に負えなそうだし、ショップに依頼するにしろ、その日のうちに簡単に終わるメンテばかりでは済まないだろう。
またショップのメカニック曰く、ケーブル完全内装は1度組んでしまうとステムの高さを変えられなかったり、ハンドルが90度切れないケースもあるとか。輪行や車載のときに困りそう。
パワー系ライダーはスルーアクスルの剛性の高さをメリットに挙げていますがね。

個人的にエアロも最重要項目ではないです。そんな高速出せなくなったし。

見た目もジオメトリーもオーソドックス。その走りも高性能な万能選手タイプ。じゃじゃ馬でもなければ、1点突出型でもない。
かといってマイルドにまろやかなバイクではなく、羊の皮を被った狼か、はたまた狼の皮を被った羊なのか、ピーキーさは無いけれど高性能バイクであることは間違いない。
言葉で表現するのが難しいけれど、ペダリング剛性は高いし高弾性カーボン特有のしなりの無い剛性感があるのに、貧脚でも踏み負ける感が全くない。ゆるポタライドでも快適。

ヒルクライムスペシャルの戦闘機にもなる、飛び道具でもあるし、ラグジュアリーな万能型でもある。野球に例えるなら走攻守の3拍子が満遍なく揃っている。
短距離専門のスプリンターでもない。むしろ長距離走も得意分野。
レスポンスが良く、癖のないまとまりの良さや官能的な乗り味と併せて、愛着の湧く、ずっと乗り続けたいと思えるバイクです。