登山とキセノンガス吸引

ロードレース界では二酸化炭素吸引が話題になりましたが、高所登山ツアーガイドの中にはキセノンガス吸引で短期登頂を謳う商業登山ツアーが話題に。

1週間でエベレストに登る方法|FINANCIAL TIMES

オーストリア人山岳ガイドのルーカス・フルテンバッハ氏は、2006年から顧客に低酸素テントを提供。

2025年の春季エベレスト登山ツアーで顧客に対してキセノンガス吸引を行う。

キセノンガス吸引で『お金はあるが時間がない』顧客向けに短期高所登山ツアーを提供する。

キセノン吸引はエベレスト登山の新しい方法でしょうか?|Outside

キセノンガス吸引

オーストリア人山岳ガイドのルーカス・フルテンバッハ氏は、キセノンガス吸引により高所順応を省略した1週間という短期間のエベレスト登山ツアーを計画している。

英国人の顧客4人の予約を受けている。ツアー料金は153,000ドル/1人当たり。商業登山と呼ばれる通常のエベレスト登山ツアーの3倍近いガイド料金となっている。

通常高所順応の事前準備を含めて6~8週間の期間が必要なエベレスト登頂。フルテンバッハ氏は2019年から自身でキセノン吸引のテストを開始。ドイツ人医師の協力の下に、自身で過去に5回のキセノン吸引に拠る高所登山を行っている。

氏によると「キセノン吸引によりヘマトクリット値は10%上昇した。これはエベレスト登山中に高所で8週間過ごした後に得られる値と同じ」

「パフォーマンス向上が目的ではなく、高山病予防の安全のため」とフルテンバッハ氏は語る。
しかし、これは詭弁だ。ヘマトクリット値が10%も!短期間に上昇したら、立派なドーピングだ。

キセノンとアルゴン吸引は2014年からWADAではドーピング禁止薬物に指定されている。

登山とドーピング|キリアン・ジョルネ

世界最高のトレイルランナーであり、トレーニングでロードバイクやMTBに乗っているキリアン・ジョルネが語る登山とドーピングの歴史。

キリアン・ジョルネはエベレスト無酸素最短時間の登頂記録を持っている。

登山は他のスポーツと異なり、世界選手権やオリンピックに象徴されるように順位を競う競技ではない。

しかしヒマラヤン・データベースのように登頂認定の組織があり、ピオレドール賞に代表される賞があり、拘束力や規制がある訳ではないが山岳会は存在している。

国際山岳連盟(UIAA)はキセノン吸引に否定的見解を示しているが、実行力も強制力も無い。UIAA組織内にはアンチドーピング委員会はありますが・・・。

五輪競技になったスポーツクライミングやアイスクライミング競技と異なり、登山は競ったり順位を争うものではなく自己満足の達成感の世界。

どうしても個人の価値観や倫理観に委ねられ、統一されたルールや規則が作りにくい側面はある。
アマチュアの登山愛好家と世界初を狙う登山家との境界も、他のスポーツと比較すれば曖昧と言えば曖昧だ。
自転車界に当てはめると、ブルベに近い。

しかし単独や無酸素、アルパインスタイルのようにより困難な過程を敢えて設定し、同じ山を登るにせよ難易度の高いルートで登ることを評価する文化もある。

過程を重視する登山家の価値観を全ての登山趣味の人達や商業登山の顧客に求めるのは不可能に近いだろう。

記録を狙うプロの登山家がキセノンガス吸引をしたら、流石に現時点よりも風当たりは強くなるだろうけれども・・・。
他のスポーツと比べて検査体制をとるのも不可能に近く、自己申告に委ねられがち。

過程よりも「登頂した」と自慢したい「ちやほやされたい」が優先される人がいてもおかしくはない。

第2第3の栗城史多のようなインチキ嘘つき登山家が出て来る前に、対策して貰いたいところ。

文化や価値観の共有には多大な時間を要しますが。

著者 : 角幡唯介
中央公論新社
発売日 : 2024-01-22
加藤典洋、沢木耕太郎、栗城史多、クルティカ、開口健、三島由紀夫らの作品や生き様を引用しつつ、自己の内面と外界との関わりを改めて問い直す。
栗城だけ反面教師になっているがw
冒険や探検に向かう自己の内面から湧き上がる衝動や行動と、それを表現し文章化して他者の反応や収入を得ること。
誰もが発信者なり得るSNS全盛の今、誰もが考える必要のあるテーマだと思う。

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