中川淳一郎「ネットのバカ」と2ちゃんねるで経験したこと
数年前に読んだ本。初版も2013年7月で6年以上も前です。しかし本書の内容は今でも陳腐化していないのではないだろうか。変遷の激しいインターネットの世界に於いて、普遍性のあるひとつの見識として紹介しようと思う。
ネットが当たり前になった時代に
当たり前の世界になったインターネットで、私たちはどう生きていくか。2ちゃんねる、ブログ、mixi、facebook、Twitter、Instagram、Youtube・・・LINEは本書執筆時点ではサービス開始後2年も経過しておらず、あまり触れられてはいない。TikTokは本書が発行されてから2年後に初リリース。
SNSが始まったのは、ついこの間の出来事のよう。しかし歴史の変遷を語れるほどに推移しています。テキストからビジュアルへ。インターネット上での情報伝達手段の主流が移ってきているように感じます。
新たなプラットフォームが提供され「これからの時代はコレだ!」的な紹介がされても結局は、
人間はどんなツールを使おうが、基本的能力がそれによって上がることはない。
ネットがあろうがなかろうが有能な人は有能なまま。無能な人は無能ままま。
筆記具が鉛筆からシャープペンシルに変わった。便利になったよね。へーそれで何が変わったの?筆記用具の違いで学力に差は生まれないよね。
イチローが市販の入門用グローブを使うとする。僕がオーダーメイドで最上級のグローブを使うとする。両者の野球技術や能力の差が埋まる事はない。頂点と最底辺であることは変わらない。比較することすらおこがましいけれど。
本書の趣旨を端的に表すと、このことに集約されるのではないだろうか。
本書の趣旨ではないと断りながらも著者は、のっけからセルフブランディングや自己啓発セミナー否定論を展開している。
実例に挙げられているのは安藤美冬氏。好きなときに、好きな場所で、好きな人と仕事をするという、自由なライフスタイル、ワークスタイルであるノマドライフの提唱者です。
僕はこの記事で安藤氏の事を始めて知りました。「ソーシャルメディアで情報発信を続ける登山家はどうやって人の心を動かすのか」対談のテーマが「魅力」とのことなので仕方ない面はある。
300人規模の講演会やら自撮りカメラの前で泣く、など対談は演出の話ばかりで登山の本質に踏み込まない。踏み込めない?
「国民的な人気タレントの所ジョージさんに評価されるなんて、国民的ヒーローじゃないですか。」安藤美冬氏
芸能人や有名人では武井壮さんや為末大さんも栗城史多さんに騙されてしまった。お2人はスポーツを見る目は間違いのないものがあるのに、登山の事は分からなかったようです。
物事や人物に対する報道や評価が、偏見や感覚に基づいたイメージ先行でステレオタイプに押し込め、対象を単純化したり矮小化してしまう。一言や一行でまとめられる評価で済ませてしまう。
それが正しいかどうかは別として、瞬時に善悪の判断をしてしまい、白か黒かの結論を急いでしまう。テレビもSNSもこの傾向が強まっているのではないかと感じるのは僕だけだろうか。
こんなインターネットやメディアの世界と、どのように関わっていけば良いのか。幻想から目を覚ます警笛を鳴らしているのが本書である。
安藤美冬氏は既に知名度が上がり、SNSに頼らなくても仕事が成り立つようになったのだろう。「これからはSNSのない世界を生きて行く」としてブログやツイッターなど全てのSNSを止めている。
ネット階級社会
99.9%はクリックする奴隷
ネット階級社会の現実を直視せよ!
知名度は格差を生む
PV絶対主義
ツイッターで世界に発信できた。フェイスブックで友人が激増した。そりゃあいいね! それで世の中まったく変わりませんが・・・・・・。ネットの世界の階級化は進み、バカはますます増える一方だ。
「発信」で人生が狂った者、有名人に貢ぐ信奉者、課金ゲームにむしられる中毒者、陰謀論好きな「愛国者」。バカだらけの海をどう泳いでいくべきなのか。ネット階級社会の身もフタもない現実を直視し、正しい距離の取り方を示す。一般の人のカネは、そのままごく一部の勝者のカネになっている。決してバラ色の世界ではなく、とんでもなく激しい競争と、生き馬の目を抜く過当競争があることは覚えておくべきだ。
著者の中川淳一郎氏の物言いに、反論のひとつやふたつも言いたくなる人もいるだろう。でも、ちょっと待ってほしい。インフルエンサーやブロガーと呼ばれるオピニオンリーダーの発言に酔って「やる気が出てきた」「前向きになった」だけで良いのだろうか?それで自分でも継続して結果が出せるようになるのだろうか?
情報の上澄みだけをすくい取って、わかったつもりになっていないか?
芸能人や著名人がブログやSNSを始める。その知名度と人気から圧倒的なアクセスやフォロワーを獲得していく。
大手企業の参入。
ペニーオークション詐欺事件に代表されるステマに見られるように、誰が言ったかが大きな影響力を持ってしまう。
一般人が新たに参入しても、勝ち残れるのはそれぞれのジャンルの中で、ほんの一握りに過ぎない。
アルファブロガーが持て囃される時代から、ブログはオワコン時代へ。そしてインフルエンサーマーケティング
ブログは報われない。
効率が悪すぎる。バイトしたほうが遥かに稼げる(特に最初の半年1年は所要時間対効果が最悪)
やってる人が多すぎて、自分の記事が埋もれる(Google検索結果1ページ目にランクされるか?)
ネタを考え続けるのが大変(記事を書いたりリライトにも時間が掛かる)
継続しないと結果が出ない。継続しても結果が出るとは限らない(限られた人、選ばれた人なら結果は出るかもしれない)
何が書けるのか、何を提供できるのか。記事の内容が訪問者にとって価値があったかどうかが問われる。
参入コストは低い。資本が要らない。誰でも始められる。しかし容易ではなく、なかなか簡単にはいかない世界ですね。会社員なら最低賃金が補償されていますが、ゼロもありえるのがインターネットの世界です。
先日、日本初となったAmazonブラックフライデーセール。大手ポータルサイトYahooにもでかでかと広告で告知されていました。このブログにもブラックフライデーの広告がGoogleアドセンス経由で表示されていましたが、弱小個人ブログなんか、まるで象に挑むアリのようです。
企業が宣伝のためにインフルエンサーを活用する時代になりました。芸能事務所宜しくインフルエンサーマーケティングを仲介する会社もある。
このブログにもAmazonアソシエイトとGoogleアドセンス広告が貼られてはいるけれども、収益が最終目的ではありません。好きな事を好きな時に書くだけです。匿名で運営していきたいからインフルエンサーなんかになりたくない。そもそもそんなにアクセスのあるサイトでもないし。
栗城史多さんの記事とか批判的な内容の記事もこのサイトにはあります。これは、
必要以上に脚色するな
着飾り過ぎるな
身の丈を知り分別をわきまえろ
自分自身に対する戒めの意味もあるのかもしれません。
2ちゃんねるでの経験談
昔オーディオ熱が高かった頃に同好の士がリアル友人に少なかったこともあって、2ちゃんねるに結構ハマっていた時期がありました。
2ちゃんねる掲示板での遣り取りでは使っている機材を書き込んだだけで「金持ち自慢」とやっかむ人も一部にはいました。また逆に自分よりも安価な機材を使っている人を蔑む人も少数ながらいました。しかし概ね同好の士が楽しく趣味を語り合う場が形成されていました。
中古品で取扱説明書が無い場合など、マイナーな世界故に機材の使い方などは、ここでしか答えを貰えない場合もある。今でこそネットで検索すれば、たいていは見つかるようになりましたが。
買ったばかりの機材の感想を早速2ちゃんねるに書き込んだその後の事。購入先のオーディオ専門店の人に僕の書き込みだとバレていて、ちょっと恥ずかしかった経験もしました。
再生される音楽という文章で表現し難い抽象的な対象であることや、聴いている音楽のジャンルや好みや経験値によって、正解がひとつではないオーディオの世界。
機材の組み合わせパターンは無限と言っていほど。部屋や環境の影響で再生音も変わる。
特定の人とメールでも遣り取りするようになったり、オフ会に参加したこともありました。
僕がリアルでお会いした人は、皆さん素晴らしい人ばかりでした。真っ当な人ばかりで、中には1流企業の役職者や病院の院長先生など、オーディオ趣味がなかったら、実社会では知り合いになる事なんてないだろうなと思える人もいました。
オーディオのオフ会なのでご自宅に伺う事になるのですが、最寄駅まで高級外車で迎えに来てくれたり。世界中を見渡してもオーナーが非常に少ない、貴重で希少な機材をじっくり聴かせて頂くような事も経験できました。楽しかったですね。
しかし2ちゃんねるのネガティブな1面として、お会いしたオフ会参加者から伺った話。
〇〇さん(ハンドルネーム)から「お前の考え方は間違っている」と毎日のように脅迫めいたメールが送りつけられてくる。
高価な最新機材を次々に買い替えていた△△さん(ハンドルネーム)は、会社のお金を着服して使い込んでしまい解雇されてしまった。ある日を境に△△さんは2ちゃんねるピュアオーディオ板に来なくなっていた。
正に玉石混交でいろんな人が居る2ちゃんねるの世界をより深く知る事が出来たオフ会でもありました。
個人名でスレッドが立つほど2ちゃんねるピュアオーディオ板での有名人だった✖✖さん。リアルでオーディオ雑誌に取材記事が掲載されたときは興味深かったですね。
今でこそ画像や映像付きのSNSが当たり前になり、インフルエンサーと呼ばれる人たちは顔出しが当たり前になってきている。
当時テキストだけで遣り取りしていた2ちゃんねるから、専門誌の取材記事デビューは画期的でレアケースなことで注目を集めていました。時代は変わりましたねー(遠い目)。
匿名の場であるからこそ、内容の真偽で判断できるように少しは成長したかな。と思える2ちゃんねるでの経験値でした。「誰が言ったか」ではなく「何を言ったか」で判断が必要な匿名掲示板。
取捨選択が自然に出来る様にはなりましたね。偉そうな事を書いてしまいましたけれど、ネットにハマったバカとは僕の事なのかもしれません。
激しい論争や、時には罵ったりする書き込みもありました。コテハン叩きや揚げ足取りもいました。電波系とおぼしき人まで。しかし、今では楽しかったことだけが思い出として残っています。スルースキルも大切かと思います。
僕は幸いにもオフ会で良い人ばかりと巡り合うことができました。しかし人を騙す手段や方法は益々巧妙になり、金銭や男女関係のトラブルや、犯罪にまで発展してしまうケースがあることもまた事実です。ネット上の出会いからリアルで会う事を推奨するものではありません。
facebookとTwitter
僕は一切やっていません。今後もやる予定はありません。旧友がfacebook経由で同級生を探して、中学時代や高校時代のクラスメイトや、部活動で仲良く顧問から殴られた旧友と再会し、同窓会が出来るようになりました。これはfacebookのメリットですね。「お前だけfacebookやってないから、同窓会の連絡を個別にしないといけないんだよ。めんどくせーヤツだな。」と罵られていますが。
ブログに書くほどでもない短文をtwitterで発信したら、とたまに思う事もあります。しかし1ヵ月に数回しか呟かないアカウントなんて見向きもされないでしょうね。きっと。
まとめ
著者の中川氏も最後に、リアルな友人関係を大切にしようと言っています。良い面もあれば負の側面もあるのがインターネットの世界。媒体が時代と共に変わっても、幻想を抱きすぎないように、適度な距離感を持ってインターネットを利用したいものです。
一期一会の出会いもあれば、慇懃無礼な輩もいる。
唯我独尊とばかりに私利私欲に走る輩もいる。
SNS、インターネットとの付き合い方や距離感の取り方を
毀誉褒貶に振り回されぬよう、斜め上から評した本。
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