髙木裕・大山真人「スタインウェイ戦争」

2019年2月26日

スタインウェイ戦争 誰が日本のピアノ音楽界をだめにしたのか

閉鎖的な業界

マイナーで専門的でもあり閉鎖的な業界では、あり得る事なのかもしれない。ましてや音や音楽という、ある意味漠然とした形のないものを扱い、そこに人間関係や私利私欲やら利権が絡んでしまえば。

他の業界でも、売りたいがためにえげつない手段であったり、ライバルの悪口を言ったり、自由競争や商道徳に背く行為があるかもしれない。

音楽業界人でもない僕が、事実関係を正確に確認することは不可能なので、あくまで1個人の読書感想ということで。

狭い業界では、業界関係者が皆遠からず知り合いというか、ムラ社会的になるのは充分にあり得る話だと思う。既得権益を守ろうとする業界の汚さもあり得る話だ。狭い村の中では、良くも悪くも噂話に花を咲かせる。総代理店問題はスタインウェイに限らずあることだし。

既存の業者にとって高木氏は後発の並行輸入業者。調律師という職人でもあるが、限られた市場を奪う商売敵である。客がプロの演奏家だけなら、その演奏家がどのピアノを選び、調律師は誰に頼むかは、自由競争に任せて演奏家の好きなようににすれば良い。コンサートホールを管理するお役所になると、プロの演奏家のような選択眼は期待できないから尚更ややこしくなる。

そんな中で、執拗な嫌がらせは随分と受けたようだ。プロの演奏家に自分が選ばれなければ、何かが足りなかったんだと考えればいい。それが松葉楽器(仮名)には出来なかったようだ。

松尾楽器商会は1953年創業。NHK交響楽団に楽器を納入する依頼を受けたことが始まり。その後、民放から楽器購入の依頼を受けたり、ホールのパイプオルガン納入業務も請け負う。1983年に先代が急逝し、東京藝術大学卒の2代目が経営を引き継いでいる。平成8年に公正取引委員会から独占禁止法第19条違反に問われる。株式会社松尾楽器商会に対する件(平成8年(勧)第12号)訴えたのは高木氏ではない別の並行輸入スタインウェイ販売店。

松尾社長は別のインタビュー記事で、公正取引委員会の担当責任者から「御社のような真っ正直な会社は見たことが無い。総代理店という独占的な立場にありながら公正に事業をしている。」と言われたと答えています。公正取引委員会の報告書の内容とは矛盾が生じています。

髙木氏もGlenn Gould Off the Record/On the Recordを見ていますね。本書にもニューヨーク・スタインウェイ本社のコンサート部で、グルードがピアノを選ぶシーンが書かれています。

狭い業界では、高木氏のような声を上げにくいと思う。松葉楽器(仮名)を悪く言えば、例え事実であっても村八分にされてしまうような事はありえるだろう。演奏家が高木氏に同調しただけで、業界から締め出されてしまうような事もあったのかもしれない。

本書はその内容からして、内部告発書的な部分が多く、本筋とは直接関係ないところで、名誉棄損で訴えられてしまったようです。

書き方や表現を考えろよ・・・と思える箇所も見受けられたので・・・企業相手なら内容が事実であれば、告発として個人的にはアリだなと思うのですが・・・個人相手はちょっとね・・・どうかと思える箇所も・・・配慮は必要です。

第2版では、その箇所を訂正。

本書の内容から離れますが、ピアノもOEMの海外製やら中国製が台頭しています。マイスターと呼ばれる製造技術者も中国に流出しているとか。どこの業界も同じですね。

教養がない人は、何を言ったかではなく誰が言ったか判断する

僕の周りにもいます。貴方の周りにもいませんか?そんな人が。

長い物には巻かれろ、付和雷同、忖度ってやつですかね。音楽業界にも学閥やら派閥やら、癒着やらがはびこっているのだろうな、と思える1冊。

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