憧れの罠に注意する|為末大
為末大さんの動画『憧れの罠に注意する』を見て触発されるものがありました。スポーツに限った話ではなく、ファッションやライフスタイル、仕事や副業、ブログでの発信・・・etc
どんなことにも当てはまる話です。
憧れの罠に注意する【為末大学】動画
憧れが悪さをし始める場合がある。
野球やサッカーなどのメジャースポーツを始めスポーツではありがちな話です。
かっこいい〇〇選手に憧れて、ピッチングフォームやバッティングフォームを真似る。
一時的に短期間のことであれば、このような経験のある人は多いと思う。真似してみて「自分に合わないフォームだな」と悟り、その後フォームや練習方法を自分自身に合った形を模索しながら作り上げていく。
野村克也元監督が言うところのプロセス主義、結果よりも過程を重視する。思考を伴った分析と改善と共通点がある。根本は同じことを言っているのだと思う。
PDCAサイクル=Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を繰り返すことによって継続的に改善してきくこと。
Check(評価)とAction(改善)の段階で、より深い思考で分析できれば、他人の方法をそのまま鵜呑みにして自分に落とし込んでも、必ずしも上手くはいかない。最善の方法とはなりえないことに気が付くはず。
憧れや好きと良し悪しと
- ヨーロッパのプロロード選手に憧れて、ハンドルを低く遠く(近年では遠くする選手は少なくなりましたが、当時は遠い選手が多かった)
- 同じくケイデンスを真似る
- 山岳に強いヒルクライマーを真似て、バイクを大きく振るダンシング
- 骨盤を立てて深い前傾姿勢がカッコイイと真似してみる
- ドロップバーの下ハンを持って長時間ライド
全て身に付くことなく失敗に終わっています。試してみてすぐに「自分には合わない。無理だ」と感じて、すぐに辞めてしまった事も多いので、傷は浅いうちに済みましたけれど。
金銭的に無駄になってしまったのは、不似合いに長いステムくらい。ダメージと言えるほどのことでもなく、勉強代と割り切れる程度で済んでいます。
しかし、これが機材を憧れやカッコイイからだけで合わない物を買ってしまうと、金銭的なダメージは大きくなってしまいますね。
特にシューズは「〇〇選手が使っているから」「カッコイイ新製品だから」では、特にワイズ=幅など足型に合う合わないの問題が大きい。見た目や色で選ぶのではなく、試し履きをして自分の足型に合ったシューズを選ぶべき。
シューズ、サドル、ハンドルの体に触れる3点は特に、好き嫌いや良い悪いではなく、自分に合うかどうか、しっくりフィットする物かどうかで選びたい。
フレームやホイールは特に、ハードウェア関係も「アンバサダーの〇〇さんが使っている」では、フィーリングが合わなくてガッカリしてしまうことも。
「好き」「気に入っている」だけではなく、ロードバイクは長時間乗り続ける乗り物なのだから、自分のペダリングや出力などに合致した、何時間乗っていてもフィーリングのしっくりくる、自分にとって好みに合った乗り味の機材を選びたいものです。
Twitterではロードバイクの画像を挙げて「どのホイールが似合うでしょうか?」のようなツイートが非常に多いです。
走りに大きく影響するホイールの乗り味を気にせず、似合うかどうかで決めてしまっていいんかい。
このような質問には口出ししないように自粛していますけれど。
推測ですが専門誌を読まない。検索して先輩ユーザーのブログ記事を見ることもない。インプレッションに触れる機会が全く無い。
だから製品によって大きく乗り味が違うことすら知らないのではないか。
本人の走り方や好みに合わないホイールを勧めてしまったら、、、と思うと何も言えなくなってしまう。
トレーニング方法やライディングフォームについても同様です。憧れや真似だけでは『自分にとって最適な物や環境』を構築できない。
情報にリーチした後に、どれだけ噛み砕いて分析するか、自分という個性の枠に落とし込んでフィットするものなのかどうか。考察と分析こそが重要になってきます。
機材選び
ロードバイク界隈では「気に入って使っているんだから、他人がとやかく口出しするな」という意見が強いです。
言い分に口出しするつもりはありません。好きを否定はしません。気に入っているロードバイクでのライドは楽しい。
しかし、

ちょっと待って。それだけで機材を買っていいの?選んでいいの?
ロードバイクのフレームは統一規格から外れ、メーカーや機種ごとの独自規格、専用品が使われるようになってきています。
規格乱立のボトムブラケット、ディレーラーハンガー、エアロ系のモデルであればシートピラーとシートクランプなどなど。ヘッドセットのベアリングもそう。
中古や通信販売で気に入った好きになったブランドのロードバイクを購入。楽しくライドを続けていたけれど・・・
これら専用品が必要な箇所が壊れてしまったら・・・
自分で故障個所を判断し、どこをどのように直せば(どの部品を交換すれば)判断し、その部品を手配して交換修理する。
Twitterでは、自分でこれらを判断できないサイクリストが非常に多いです。
中にはスムースに事が進まないと簡単に「自転車辞める」などと言う人までいます。
ならば、
好き嫌いでロードバイクのブランドを選ぶよりも
市内の通える自転車店が取り扱っているブランドのロードバイクを買う。
自分で判断できないことや直せない修理は自転車店に任せて依頼する。
という選択があってもいい。
故障してどうしていいかわからない、では手遅れですよ。
積極的に機械的な知識や技術を学んでマスターしていけるサイクリストは別ですが。
アンバサダー問題
Twitterでロードバイク界のアンバサダー問題が物議を醸しましたが、これはアンバサダー各個人の問題だけではないと考えます。
- 機材提供するメーカーや代理店側の問題。
- 既存メディアの問題。
- プロへの機材供給に誰しも異論はないがプロ選手、特にJプロの発信力や影響力が薄れてきている現状。
- アンバサダー各自のインプレッション能力や文章力。
- 命を預ける機材にイメージ戦略だけで販売していいものなのか。
- 高額なのに耐久性やメンテナンス性に欠ける製品も少なからず存在する。このような情報はアンバサダーからの情報発信が少ない。雰囲気を売ったり流行を作るだけに終わっている。
- 通信販売の隆盛、SNSの隆盛の消費行動への影響。
- 消費者側も「好き」「気に入った」だけで考察力や分析検討に欠けてきている傾向が見られる。批判や議論、調査分析を嫌う傾向。
- 総合的に多角的に見るべき事柄を〇〇だから良いと、一言で簡単に結論付けてしまうユーザーが増えている。
- 情報化社会であるはずなのに、情報を得る範囲が狭くなっている。消費者が情報の主査選択と消化吸収が出来ていない。
アンバサダー問題はロードバイク、自転車に関わる全ての事象が複雑に絡み合って、相互に影響し合っての事なのではないでしょうか。
「好き」「楽しい」ポジティブな感情を否定するものではありません。
『現状のままでいいのか』『それだけでいいのか』という問題提起だったと思うのです。
現代の日本の言説空間は『外部』を持たない。言い換えれば、『批評』が不在である。
柄谷行人『批評とポストモダン』より
馴れ合いと持ちつ持たれつ、忖度と褒め合うだけの関係は、インターネットのなかった1985年に書かれた評論でも言われていることです。
ブログ・副業界隈における憧れと賛同

こちらの分野での『憧れ』は、収益や承認欲求に直接的に関わってくる。より根深い問題が起きています。
金銭のやり取りを伴う情報商材や、精神的従属を伴うセミナーやサロン。
発信力のあるアカウントのツイート、影響力のある人のツイート、もっともらしい自己啓発ツイート、稼いでいる(らしい)結果を出している(らしい)ツイート・・・etc
これらを見て、情報を得たつもりになっても、いくら『いいね』を押しても学んだことになはらない。
イチローや大谷翔平選手の練習方法を知り真似してみても、彼らのような超一流のプロ野球選手になれる訳ではない。
有名なJリーガーが多数卒業生にいる名門高校のサッカー部に入部しても、誰もが1流のサッカー選手になれる訳ではない。
その方法や課程が、自分にとって最適かどうかは、また別の話。
良い情報だとしても、自分に当てはめられない情報や、料理できない消化吸収できない情報は『捨てる』ことも必要。
そして情報を得ることよりも、いかにして突き詰めて考察するか、実行するかが重要であるはず。
『継続』『頑張る』『ポジティブ』
悪いことではありませんが『その具体的な中身は?』が大切だと思うのです。
先に挙げたPDCAサイクルの過程に当てはめると、Plan(計画)とDo(実行)だけが目立っていて、または実行の段階で満足感に浸ってしまい、重要なCheck(評価)とAction(改善)の繰り返しがあまり語られていない。
稼いでいる(らしい)人の教材で真似てみても結果が伴わない。
大谷翔平選手のフォームを真似てみても160km/hで投げられない。
憧れが悪さをしていることには変わりません。
講とギルド
自主性や主体性、そして個人の価値観や自分のための時間を大切にする生き方を望んでいるはずなのに、
例えるなら平安時代から続いている『講』中世における西欧の『ギルド』
相互扶助の集団、思考停止で各個人の自由意志を持たない、批判を認めない馴れ合いの組織に所属したがるのは何故なのだろうか。
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