ロードバイクにおけるジャイロ効果

2021年7月12日

ロードバイクのホイール交換。走行性能に影響するジャイロ効果について

イントロダクション:ロードバイクのホイール交換

ロードバイクのホイール交換は定番中の定番のグレードアップ。走りに大きく影響するホイールの交換は、多くのサイクリストが視野に入れるところです。

ここ最近僕自身のホイールと言えば、、、

年齢と体力気力的なところで今後レースに出ることもない。がむしゃらに速さを競う感覚が無くなってきた。

サイクリングロードを走る時間と機会が増え、特に春先は風の強い日が多く横風で煽られるのが嫌だ。ホイール選びの優先事項がエアロ効果最優先ではなくなった。

適度に軽量でバランスの良い乗り心地と快適性に志向が振れてきた。

これらの理由からここ2年ほどホイールはMAVICキシリウムPROカーボンSL USTをメインに使っていました。

以前ディープリムのホイールは2ペア使っていましたが、これを機会に手放してしまいました。

しかし、ここに来てMAVICコスミックPROカーボンSL USTの旧モデルを格安でゲット。

ホイールのインプレ記事は改めて書くことにして、ダンシングをしたときにバイクの特性と挙動が余りにも変わったので驚きました。
ステアリング特性やダンシングの感覚がこんなにも変わるのかと。

ホイールを交換したとき加速や登り坂、空気抵抗だけではなく、ハンドリング特性=直進性やキレの良さが変わることは、ホイールを交換した経験のあるサイクリストなら誰しもが感じたことだと思います。

以前にも軽量ホイールとカーボンディープを入れ替えて使っていた時にも感じていたことですが、改めて自転車の車輪におけるジャイロ効果について考察してみたいと思い立ち記事にします。

自転車の車輪におけるジャイロ効果

なぜ自転車は倒れないで走り続けられるのか。その理由の一つとしてジャイロ効果について様々なところで解説されています。
実際にはジャイロ効果だけが理由ではなく、前輪を保持してハンドル操作のために与えられたキャスター角=ヘッドアングル(オフセットやトレール含む)などジャイロ効果以外の要因も含めて、乗っている人間がバランスを保持しつつ倒れずに走ることが出来ています。

速度が速いほど安定性や直進性が増すこと、乗員を含めた慣性モーメントも、その理由の一つです。
自転車はスタート直後の低速でふらつきやすいこと、とくに幼児や高齢者に顕著に見られますが、これは人間を含めた自転車全体の慣性モーメントと車輪に作用するジャイロ効果が、速度が遅いために充分に作用していないことが理由とされています。

ジャイロ効果

回転軸保存性=物体が回転運動をすると、外から力を加えられない限りその自転軸の方向を変えず、また回転速度が速いほどその特性は強まる。

回転速度に比例してジャイロ効果は強まる。

角運動量に比例してジャイロ効果が強くなる。車輪径が大きく重量が増えるほどジャイロ効果が増す。

ミニベロなど小径車はハンドリングがクイックに感じるのも、このあたりの理由に依るものなんですね。

幼児車、子供車も身長との兼ね合いで仕方のない事とは言え、大人用の26インチママチャリと比べるとバランスはとりにくい。
大人用の自転車で言えば26インチと比較すると27インチの自転車は直進性が強くなる。MTBでも26インチ⇒27.5インチ⇒29インチと車輪径が大きくなるほど安定性が増していきます。

ロードバイクでは車輪径は700Cで同一。リムやタイヤチューブを含めた外周部の重量が角運動量、ジャイロ効果の大小に影響します。

ロードバイクのホイールとジャイロ効果

規格で700Cの車輪径に統一されているロードバイク。直径におけるジャイロ効果の差異は考慮しないで済みますので、角運動量に影響を与えるのは速度と外周部の重量となります。

 キシリウムPROカーボンSL USTコスミックPROカーボンSL UST
リムハイト25mm40mm
スポーク数F18H/R24Hイソパルス組F18H/R24Hイソパルス組
実測ホイール重量F655g/R844g計1,499gF672g/R861g計1,533g
公称リム重量425g450g

ハブは同じ。スポーク本数も組み方も同じ。スポークはリムハイトによる僅かな長さの違いだけしかありません。

カタログスペック上ではリムハイトの違いでリム重量が1本あたり25gの差。しかしホイールの実測重量は片輪で僅か17g。前後あわせても34gにしか過ぎない。
タイヤもMAVICイクシオンPRO USTで全く同一のもの。空気圧もシーラントの量も同一条件での比較になります。

なのに何でこんなにもステアリング特性が変わるのか!

自動車に例えれば、ショートホイールベースの俊敏なスポーツカーから、ロングホイールベースのGTカーに乗り換えたような違いが感じられます。

ダンシングで大きくバイクを左右に振ったとき、振りの軽さが全く変わってくるんです。

ジャイロ効果の影響

MAVICのキシリウムPROカーボンSL USTからコスミックPROカーボンSL USTにホイールを変えて感じたこと。
高速巡行や加速性などのインプレッションは改めてまとめて記事にします。

ここではジャイロ効果に関わりそうな乗り味の変化に的を絞ります。

・直進安定性が強くなった。

・ダンシンングでバイクを振ったとき重たく感じるようになった。

直進安定性が強くなった。ステアリングのクイックさよりも安定性と直進性が強調されるハンドリング特性に変化した。
時として機敏で敏感過ぎてヒラヒラ感と感じる人もいるほどのLOOK 785 HUEZ RS。どっしり安定志向に変化。

ダンシングでバイクを振るときLOOK 785 HUEZ RSの車重が軽く剛性も高いので、軽快にダンシングできていたのにバイクの振りに重さを感じるようになった。
※加速に重さを感じた訳ではなく、ダンシングで左右にバイクを振る動作に重さを感じます。リム重量や剛性の違いによる加速性能の違いはシッティングでも確認できます。重量差による加速性能の違いはここでは除いて考えます。

またホイールの重量バランスを取ると重量偏差の精度が上がり、ブレが減るのでバイクの挙動は重くはならないが安定感が増すように感じられます。

ホイール1本あたり僅か17gの差で、こんなにも乗り味が変わるのか

リムハイト=リムの縦剛性の違いは僅かに感じますが、ダンシングでバイクを振ったときの大いなる感覚の違いは、どう考えても剛性の影響は極々小さいもので、どう考えてもジャイロ効果の影響が大きい。

ヒルクライム用などの軽量ローハイトホイールに変えたときは、逆にダンシングの振りが軽くハンドリングが機敏になったように感じます。

コーナリングなどでは気になるような変化は感じられませんでした。カーブを曲がっている最中は違いを感じず、ハンドルを切る動作のとき。
ダンシングとハンドリングに与える影響が大きいです。

想像以上にロードバイクの乗り味に影響するホイールのジャイロ効果

この動画に習ってロードバイクのホイール単体を垂直に両手で支えて回転させてみます。

そしてその回転させているホイールを傾けてみると、かなり強く元に戻ろうとする反作用=ジャイロ効果による力が感じられます。

ホイール単体、しかも手で回しただけなので回転速度は大して速くないのにもかかわらずです。

こんなに強いジャイロ効果の作用が働いているとは!
驚きました!
これはサイクリストの皆様に是非とも試してみて頂きたい!!

トッププロ選手のダンシング

2021ジロ・デ・イタリア第11ステージでのエガン・ベルナルのアタック

2021ツール・ド・フランス第15ステージでのリチャード・カルパスのアタック

https://twitter.com/LeTour/status/1414243845450129408

この2つの例に限らずヒルクライムでのダンシングアタック。
体をよじると言うか捻っているためでもありますが、ハンドルを意識して真っ直ぐに保つよりも、結果としてある程度ハンドルを切り、意図せずとも蛇行するような走り方になることがあります。

全力なのか休むダンシングなのか。速度やホイール外周部の重量=発生しているジャイロ効果の大きさによって変わりますが、ホイールが変わるとダンシングでのバイクを振る振り幅と、意図的ではないにせよハンドルを切るような体の動き。
ダンシングでのフォームを変えて調整した方が違和感が少ない。

ホイールの違い=ジャイロ効果の大きさの違いによってダンシングでの乗り方を変えた方が良さそうです。

自転車が蛇行するまでではないにせよ、ダンシングのリズムに合わせてハンドルが切れるフォームで乗るとバイクの振りが軽く感じられます。

歳差運動

コマを回すと、最初は中心軸がすりこ木のように回転しているが倒れない。そして徐々に軸の揺れは収束していき、垂直の角度で安定する。

ジャイロ効果に起因する歳差運動も、ロードバイクにおけるステアリング特性やダンシングの特性に大きく影響しているのでしょう。

想像以上にロードバイクの乗り味に影響するホイールのジャイロ効果。

試乗と考察を今後も重ねていきたい。