シマノ12速コンポーネントに想うこと

2021年9月9日

シマノR9200デュラエース12Sコンポーネント

2021年9月1日、シマノ新型デュラエースR9200 & アルテグラR8100正式発表

そのスペックから今後のロードバイクの行方について、思うところをまとめていきます。

デュラエースやアルテグラを検討しているサイクリストは、それぞれの楽しみ方や走り方、スタンスによって感想があると思います。

その前提条件として、先ずデュラエースはレースでの勝利を目的として開発された競技用機材であること。
アルテグラもそれに準じ、非レース派サイクリストは性能や趣味性に於いて、それをサイクリングに流用している側面があること。

ロードバイク全体の世界的な流れとして、ディスクブレーキの普及、ハイエンドモデルでは特にワイヤー完全内装化=エアロ化の流れ。ハイエンド以外でもワイヤー内装化の流行など。

これらを踏まえて組み込まれるコンポーネントを考える必要があると思われます。

12速コンポーネントはDi2電動のみ

新型デュラエースR9200系及び新型アルテグラR8100系の12速化されたコンポーネントはDi2電動変速機のみ。

所謂紐式変速機=ワイヤー式ディレーラーはシマノ12速コンポーネントでは不採用。ラインナップから外れることとなりました。

油圧ディスクブレーキ×Di2電動変速

油圧ディスクブレーキ×機械式変速

リムブレーキ×Di2電動変速

リムブレーキ×機械式変速

バリエーションが増えユーザーの選択肢が増えるのは良いことですが、工業製品としては少ない仕様で製造コストを抑えられれば、それに越したことは無い。

デュラエースでは、この4種類に加えてTTバイク用のブレーキレバーやシフトレバーのラインナップも必要。

シマノは増えすぎたバリエーションの整理整頓を始めたのだと感じています。

ディスクブレーキ&機械式変速のSTIレバーは重い!大きすぎて握りにくい!

R9100系デュラエースでデュアルコントロールレバーの重量を比較してみると、

ST-R9150230g
ST-R9120538g
※重量は共にペア

最軽量のDi2電動変速+リムブレーキ仕様のST-R9150と、最重量の機械式変速+油圧ディスクブレーキ仕様のST-R9120では、なんと308gもの重量差があります。

これに加えて変速周りのシフトワイヤーとエレクトリックケーブルの重量差と、ワイヤーによる張りがステアリング特性に影響を与えます。
張りのあるシフトワイヤーと、しなやかで曲がりやすいエレクトリックワイヤーの違いが。

タイヤやホイールの重量差は、サイクリストなら誰しも感じているところ。

STIレバーの重量差もダンシングで特に違いが分かりやすく、普段最軽量のDi2+リムブレーキ仕様のST-R9070を愛用しているため、ディスクブレーキ+機械式変速のSTIレバーはダンシングでバイクを左右に振ったときに重く軽快感に欠ける。
個人的にはダンシングするのが嫌になるほどの違いを感じます。※サドル重量やサドルバッグを付ける付けないでもダンシングの軽快感は変わります。

蛇足ですがLOOK 785 HUEZ RS+Di2リムブレーキ仕様のSTIレバー+軽量なカーボンハンドルバー+ローハイトで軽量なホイールの組み合わせは、ダンシングでは最軽量の軽快感だと感じます。
※クイックで機敏過ぎると感じる人がいるかもしれないレベルかも。

そしてディスクブレーキ+機械式変速のSTIレバーは、重量だけでなくブラケットが大きくて握りにくい

乗車中、最も長時間触れているSTIレバーは、人間工学的に握りやすい大きさでなければなりません。

その限られた大きさの中に、油圧ディスクブレーキと機械式変速の構造を収めなければならないこと。
そして重量増になってしまうことから、新開発の12速コンポーネントでシマノはディスクブレーキ+機械式変速のSTIレバーに見切りをつけたと推測しています。

内装化に伴うワイヤーの取り回し

ワイヤー類完全内装化エアロロード

デュラエースがアッセンブルされた完成車ではワイヤー類は完全内装化が進み、それ以外でもハンドルバーとフレームは可動部のコラム周囲を除いてワイヤー類の内装化が普及しています。

12速化でシビアになった変速機のワイヤーを完全内装化できるのか?

フレームが先にありきなので、ワイヤー内装化されたフレームで12速機械式変速が正常に動作するのだろうか?

そして整備性は?

シマノのロードバイクコンポーネントでは特に、ブレーキワイヤーよりもシフトワイヤーが切れやすく交換頻度が高い。

ワイヤー類、ディスクブレーキ車の場合は正確にはホースですが、特にデュラエースの場合は完全内装化されたフレームにアッセンブリーされることを前提に考えなければならない。

そこでシマノは整備性と変速の信頼性の観点から、12速化された新型デュラエースとアルテグラでは機械式変速に見切りをつけ、Di2電動コンポーネントのみにしたのだと推測しています。

11速コンポーネントでさえ、取り回しが長くなるリアシフトワイヤーを交換するのにクランクやBBまで外さないといけなかったり。
全てのフレームがそうだとは限りませんが、現状でも整備性やメンテナンス性が悪すぎるように思います。

完全内装化されたフレームでは、ハンドルの高さを変えたりなどのポジション変更にも、ワイヤー類全交換の必要に迫られたりすることもある。

本来フレキシブルで適度に自由であるべきなワイヤーが、内装化の普及によりデメリットも生まれているのです。

Di2電動コンポーネントなら、変速ワイヤー周りの問題点が全て解決。

1度組んでしまえば、ワイヤー(エレクトリックケーブル)は交換の必要もなくメンテナンスも必要ない。

11速有線接続でも内装化されたフレームではメンテナンスを考慮して、ジャンクションBがボトムブラケットから取り出せるように、エレクトリックワイヤーを長めにして組み立てます。長くてもフレーム内部に隠れているので見た目のカッコ良さもノープロブレム。

機械式変速のシフトワイヤーでは、こうはいきません。

無線化した12速STIレバーなら完全内装化されたフレームでも、リムブレーキ仕様ならブレーキワイヤー。ディスクブレーキ仕様ならオイルホースのことだけを考えれば良い。

ポジション変更の難易度や費用も軽減されるし、整備性も向上します。輪行でハンドルが90度曲がらないような事も、バイクや組み方に依存するところもありますが、解決されて来ると思われます。

多段化+ワイヤー内装化の両立は無理があり、どこかで見切る必要があると個人的には感じています。

レースシーンではエアロ化、空気抵抗低減のためにワイヤー完全内装化の流れは必然。
そこで無理の出てきた12速機械式変速に見切りをつけて、新型12速デュラエースとアルテグラではDi2電動コンポーネントのみに絞ったと予想しています。

そしてリムブレーキ仕様ではデュアルコントロールレバーの変速系統は有線接続のみ。

リムブレーキ仕様のフレームでは、コラム周りを含めてワイヤーフル内装バイクは皆無に等しい。

Di2エレクトリックケーブルならアールのきつい無理な取り回しが問題になることも無く、無線化のメリットは組み立てのときの手軽さだけ。1度組んでしまえばメンテナンスフリーのDi2ではメンテナンスの手間が増えることはなく、バッテリーの数が増えた分だけバッテリー残量管理のわずらわしさが増えてしまう。

個人的には無線化にメリットは全く感じない。バッテリーは1つで良い。

コンポーネント間の棲み分け

今まではハイエンドコンポーネントであるデュラエースのモデルチェンジが先行。その後にアルテグラ、105,ティアグラ・・・と新メカニズムが次々と順を追って採用されてきました。

しかし、これからの行方は?

現行4700系ティアグラが過去の10速コンポーネントと互換性が保たれないモデルチェンジがされています。※カセットスプロケットは互換性あり。

今回のDi2電動コンポーネントのみに絞ったモデルチェンジが行われた9200系デュラエースと8100系アルテグラ。

今後は完成車価格を抑えたり価格面の観点からも『モデルチェンジがあっても多段化しないコンポーネント』や『Di2化しないコンポーネント』があり得ると予想します。

bistarai.info

今回の12速化モデルチェンジで「値上がり過ぎ!」と言ってる人は、紐コンポとDi2の値段を比較してしまっています。モデルチェンジ以前から紐式とDi2で価格差があるのは既知のことなのに。
但し8000系アルテグラを当面の間継続生産するとは言え、8000系紐式の生産が終了すれば、Di2電動変速8100系アルテグラと105の価格差が開きすぎてしまう問題は残ります。
マーケット的にもユーザーの要望的にも間を埋める必要はあるのではないでしょうか。

個人的な根拠のない推測に過ぎませんが、Di2電動コンポーネントはデュラエースとアルテグラのみ。105は11速のままで電動化しない。ティアグラも当面は10速のまましばらく継続されるのではないでしょうか。

世界的なディスクブレーキの普及から、ティアグラや105でもディスクブレーキ仕様は必要。

油圧ディスクブレーキと機械式変速の共存は11速までとシマノが判断したのだと推測。

「Di2電動変速不要」「12速も必要ない」「突き詰めた軽量化は必要ない」派サイクリストは105以下のコンポーネントや旧型コンポーネントからの選択に迫られるでしょう。

リムブレーキはINEOSからの強い要望との噂がありますが、リムブレーキ仕様も継続されるために生き残った形になりました。

品薄状態が続き納期が更に延びたりなど混沌とした状況が続いていますが、競技用コンポーネント(ハイエンドコンポーネント)と普及価格帯のコンポーネントとの差別化と分離化が、今後更に進んでいくのではないかと感じています。