2013全日本選手権ロードレース男子エリート

2019年5月10日

自転車競技ロードレース日本一を決定する2013年全日本選手権

第82回全日本自転車競技選手権大会ロードレース 男子エリート

大分県県民の森平成森林公園周辺特設コース1周15km×12周=180km

2013年6月23日(日)

9km下って8~10%の勾配を6km登る、登りと下りしかないこのコース。1周の獲得標高は470m=累積獲得標高5640mという過酷さ。スタート/フィニッシュライン付近の数百mだけがほぼ平坦。下りはテクニカルなコーナーが連続する難易度の高いレイアウト。霧と雨という当日の天候も更に過酷さを増すことになる。

スタート後の下り区間9kmはニュートラル走行。登りに入ってのリアルスタートで西谷泰治(愛三工業レーシング)が動き、すぐに集団は分断。土井雪広(チーム右京)もすかさず追走する。2周目の下りで新城幸也が先頭集団に合流し、レースはいきなり8名の先頭集団による逃げの展開になる。

後方のメイン集団は逃げに乗れなかったブリヂストンアンカーが、集団の前方を固めてコントロール。エースの清水都貴を先頭集団に送り込むべく、選手個人の実力が丸裸にされるような過酷なサバイバルレースとなる中、唯一のチームプレーを見せて追走。6周目には先頭との差を1分に縮め、一方の先頭集団からは新城幸也と土井雪広の2人が抜け出す。

アッタックを仕掛けて逃げるという展開ではなく、集団のペースに付いていけない選手が遅れ、清水と増田の2人が追走を始めた頃には個人戦のような完全なサバイバルレースの展開に。女子のレースで3位になった萩原真由子が写るシーンも。

新城幸也選手が圧倒的な実力差を見せつけて優勝

9週目には土井が遅れ始め、10週目には後方集団から抜け出した清水が土井をかわして新城を追走。その後新城は1時間半に渡る独走の末、2位の清水に6分15秒もの大差をつけ優勝。最終周回に入るアナウンスで「2番手の清水都貴との差は5分15秒」とあったけれど、必死に追走する清水にラスト1周で更に1分も差を広げての圧巻のフィニッシュ!

ヨーロッパから強行軍で日本に帰国して大分へ移動。移動だけでも消耗しそうなのに、圧倒的な実力差を見せつけるレース展開は、凄いの一言に尽きる。

土井はレース前から体調が悪く、吐きながら走っている。後半はハンガーノックのような状態だったそう。この過酷なコースで補給食や飲料吐いてしまったら、そりゃガス欠にもなってしまう。コンディションが悪くても1周目の登りでいきなり有力選手が逃げているので、これは追わなくてはと思ったのではないか。

新城がこのコースで使用したギヤはフロント53×39T、リア11~27T。リアスプロケットは当時市販品にない組み合わせのプロ仕様。雨天のスリッピーなウェット路面にも関わらず53×11Tを使うダウンヒル。39×27Tを使う獲得標高5640mのヒルクライム。コースの過酷さを物語る。

バイクはコルナゴC59。カンパニョーロ・スーパーレコードEPS11S+ホイールはボーラ・ウルトラ50。日本のナショナルチャンピオンジャージを着て出場したこの年のツールドフランスでは、バイクも日の丸をあしらい漢字で”日本”とペイントされた特別カラーのC59を駆って走った。

男子エリート結果
1位 新城幸也(ユーロップカー)             6時間17分31秒
2位 清水都貴(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム) +6分15秒
3位 増田成幸(キャノンデールプロサイクリング)     +9分14秒
8位 土井雪広(チーム右京)              +12分56秒
完走はわずか16名

上位3人は今でこそ所属チームの袂を分かっているが、元はエキップアサダのチームメイト同士である。

コースが厳しすぎるという批判もあったようだけれど、世界レベルの厳しいコースで生き残れる選手は誰なのかが、わかるレースだったのではないかと思う。200kmを走る持久走の中での爆発的なアタックやゴールスプリントも凄いけれど、こうした過酷なコースでの消耗戦もまた面白い。

新城幸也選手は春先の練習中に落車による骨折のため、現在はリハビリ中。東京オリンピックでも代表選考の最有力候補です。

その昔、引退して間もない元全日本チャンプといっしょに走らせて頂ける機会があった。平坦路は50km/hで引きまくられ、あえなく千切られた。登りも当然の如く付いていけず。そしてダウンヒル。コーナーでのライン取りとフォームが芸術的に美しかった。僕1人では絶対に出せないスピードなのに、同じラインを追走してトレースすると、恐怖感を全く感じないで付いていけてしまう。オートバイやレーシングカートの選手も、コーナーで走行ラインが5cmずれたらタイムが落ちてしまうと言う。ロードレース選手のダウンヒルも同じなんだ。

完璧な曲線(走行ライン)を先行して引き、「この線から外れては遅くなるだけだよ」と言われているようだった。

修正や訂正の必要が全くない、無駄や無理のない綺麗な曲線。修正の動作が無かったからフォームに美しさを感じたのだ。