【検証】STIレバーの重量の違いを体感実験してみた
STIレバーの重量差がフィーリングに影響するのか
シマノSTIレバーの重量差がロードバイクのライディングフィールにどのような影響を与えるのか。
STIレバーの重さが変わると、乗り味にどんな違いが生まれるのか。
型式 | 品番 | 重量(左右ペア) |
リムブレーキ&ワイヤー変速 | ST-R9100 | 365g |
リムブレーキ&Di2電動変速 | ST-R9150 | 230g |
油圧ディスクブレーキ&ワイヤー変速 | ST-R9120 | 538g |
油圧ディスクブレーキ&Di2電動変速 | ST-R9170 | 320g |
ブレーキや変速操作の性能や操作感の違いではなくSTIレバーの重量の違いで、ロードバイクそのものの乗り味に違いが生まれると言う話です。
僕自身は初めてアルテグラ6760でDi2電動コンポーネントで組んだとき、その違いを実感できました。
また、その後の油圧ディスクブレーキの普及に伴い試乗会などでも体感済み。
しかしコロナ禍でイベントは激減、メーカーラインナップもディスクブレーキ仕様のみに絞られたりして、その違いを体感できるような機会が得られない。
自分のバイクで試すにも、交換に要する費用も手間も尋常じゃない。コンポーネントのほぼ半分を入れ替える必要がありますから。
要するに再現性の難しいテーマなのです。誰もが手軽に体感することが出来ない。
Twitterを始め様々な議論が生まれていました。
自分で試してもいないのに、あれこれと意見したり反論もあったような・・・
何か手軽に再現できる方法は無いかと思案していたところ・・・
閃いた~!!
この方法ならサイクリスト誰もが実験できるんだぜ!
STIレバーに重りを取り付ける
ブレーキやシフトチェンジに異常をきたしてはいけない。
ブラケットを握る太さや感覚も変わらない状態でテストしたい。
走行中に外れたり落下してはいけないし。
なかなか良いアイデアが思い浮かばなかったのですが、、、やっと閃いた!
前置きが長くなりましたが、その方法とはSTIレバーに釣りのオモリ、天秤オモリを取り付けること。
プロマリン(PRO MARINE) ちょこっと投天秤 8号 AGP003-8天秤のアーム=針金部をレバーにビニールテープなどで巻けば、付け外しや重さの変更も自在。
直接抱き合わせて巻かないで、ビニールテープで下巻きしておけば、STIレバーに傷もつきません。
エーモン(amon) 結束テープ 幅19mm×長さ20m×厚さ0.13mm N855単体のオモリでは取り付け方法が思い浮かばなかったけれど、天秤オモリならピアノ線のアームをブレーキレバーの内側にビニールテープで巻きつければ固定できる。ブラケットの握りも変わらないし、ブレーキや変速操作も問題ない。
釣りのオモリの重量単位は号数で表す。1号は1匁で3.75g。
手持ちで家にあったチョイ投げ釣り用の天秤オモリ6号、8号、10号セットを各2個ずつ。
合計48号=180gを片側90gずつに振り分けてST-R9070デュアルコントロールレバーにビニールテープで固定。
レバーの内側に固定するとブレーキやシフトチェンジにも影響しない。
この方法ならSTIレバーの重量差だけを比較試乗できるのです。
ST-R9070(230g)+180g=410g(ペア)のSTIレバーの完成です。
インプレッション
先だってTwitterで検証結果を報告しましたが、
・小刻みにステアリングを左右に揺するように切ってみる。
・ハンドルを大きく切る。低速Uターンの曲がるきっかけの最初の大きなステアリング操作。
・ダンシングでバイクを大きく左右に振る。
・疑似的に緊急回避動作。
特にこのような自転車の操作をしたときに、その違いがはっきりと体感できる。
明らかに重く鈍重になり、バイクの応答性や反応が鈍くなる。
別の角度から見れば、ハンドリングが落ち着いて安定感が増した=直進安定性が強くなったような感覚がある。
直線の道路を走っていても表現が適切ではないかもしれませんが、トレールが長くなったバイクに乗り換えたような、安定感は増したが応答性が損なわれたような感覚があります。
しかしそれは反応性や応答性、俊敏性とは相反する要素。
例えるなら卓球やテニスで軽いラケットから重いラケットに変えたような、意のままに振れない操れない感覚。
野球のバットが重すぎて変化球やスイング始めてボール球を見送るのに、バットの重さに振り回されて対応が遅れる感覚と言ったらよいのか。
まるで別のキャラクターを持ったバイクに乗り換えたかのようだ。
機敏に反応する応答性の軽さや反応の速さを取るか、落ち着いた安定感を取るか。
どちらを選ぶのかはサイクリストそれぞれの好み次第。しかし明らかにバイクの操作感は異なる。
そしてオモリを付加したままの状態で乗り続けていると、これが普通になり慣れてくる。最初に感じた違和感や大きな差が感覚的に薄れてきます。
どちらが速いとか、どちらが優れているといった問題ではありません。
ローハイトの軽量ホイールから重量のあるディープリムに変えたときにも、同じようにステアリングの直進安定性が強まりクイックな操作感が損なわれる感覚があります。
※こちらは加速や登りは慣性モーメントに、ステアリング操作はホイールのジャイロ効果に拠る現象。
この実験のポイント
あくまでSTIレバーの重量比較であること。
このテーマがネット上で話題になったとき、
サイコンやライトで数百グラムをハンドルに取り付けても違いが分からない。
そんなことでバイクのフィーリングが変わる訳ないのでは?
そうした疑問を解決するために、誰もが簡単に試すことが出来るテスト方法です。
サイコンやライトはステム付近、ハンドルバーの中央寄りに取り付けますよね。
ステアリングコラム=ハンドル周りの中心軸(回転軸の中心)付近と、最も遠いハンドルバーの端=STIレバーの位置では同じ重量を加えても慣性モーメントが異なります。
スプロケットの重量差100gは乗っても違いが分からないけれど、リムやタイヤチューブ100gの差は乗れば違いがわかり易い。
ペア1500gのホイールでカタログ上の重量は同じでも、一方はリム重量500gもう一方がリム重量が400gでは、加速性や登りでは明らかに違います。
スペアチューブや携帯ツールをサドルバッグに装備するか、ツール缶に入れてボトルケージに装備するか。
ダンシングでバイクを振ったとき、振り子の支点は路面とタイヤの接地面。そこからの距離の違いでダンシングの軽快感、バイクの振りの軽さが変わる。
ツール缶がサドルバッグよりも振り子の支点に近いため、同じ重量を加えても慣性モーメントは軽くバイクの振りは軽くなる。
単純な重量比較ではなく、これらは慣性モーメントの違いからフィーリングや軽さに影響を与えているのです。
同じ重さ=この実験では180gをサイコンマウントやボトルケージに追加しても、このような乗り味の違いは生まれません。
計測重量ではなく慣性モーメントはロードバイクの乗り味に様々な影響を与えています。
そして機械式変速や油圧ディスクブレーキをDisっている訳ではありません。機械式変速や油圧ディスクブレーキには長所もあるし。
サイクリストそれぞれが自分自身の用途や好みに合った方式を選べば良いのです。
あくまでもロードバイクの乗り味や操作感に関わる違いを体感する実験です。
どちらが速いとか、どちらが優れているかという話ではありません。
自分のバイクに付いているSTIレバーの重量に慣れてしまえば、それが普通で当たり前の感覚になるでしょう。
しかし、その違いにこだわって比較してみたときに、気になる人にとっては非常に気になるロードバイクの乗り味に関わる問題なのです。
ディスクブレーキかリムブレーキか、紐変速かDi2か。バイク選びに迷ったときの選択項目のひとつとして、頭に入れておいても悪くない項目かもしれません。
1,000円以下の出費で手軽に試すことが出来る実験です。
興味があればぜひ試して、ご自身で体感してみてください。
シマノ(SHIMANO) ST-R7000 左右レバ-セット 2x11S STIレバー ISTR7000DPAL アルミニウム ブラックコメントでご指摘有り。訂正および加筆しました。
コメントで通りすがりさんから「慣性質量と書かれているが、慣性モーメントが正しいのでは」とご指摘を頂きました。
ご指摘の通り、回転運動や円弧運動で働く慣性なので慣性モーメントが正しいです。
ここに慣性質量から慣性モーメントへ訂正させて頂きます。ご指摘ありがとうございました。
ダンシングでバイクを振ったときに作用する慣性モーメント
僕のダンシングはリチャード・カラパス程ハンドルが大きく左右に振れてはいませんが、ダンシングはバイクを左右に振る際の慣性モーメントと、引き腕でステアリングが左右に切れる慣性モーメントが同時に複合的に作用していると思われます。
僕の場合は引き腕でステアリングが左右に切れすぎないように、引き腕を真っ直ぐに固定するような力も加えてダンシングの引き腕を使っています。
測定は出来ないですが、ダンシングでは様々な慣性モーメントが作用し、引き腕の力もそうですが体をひねるようにペダリングしているので、様々なベクトルの力が複合的に関連しながら作用しバイクのフィーリングに影響していると思われます。
ステアリングコラムを中心とした慣性モーメントが作用しているだけでなく、同じ重さを負荷してもバイクのヘッドアングルやフォークオフセット=トレール寸法によっても感じ方が変わるかもしれません。
このあたりまでは分析不足、理解不足でまだよくわかっていません。
「ハンドル中央の数百gがわからんならブラケットもわからんだろ」と貴方が煽った。
とのコメントも頂きましたが、そのような趣旨の発言はしておりません。
STIレバーにオモリを取り付けて簡単に実験できるので、とにかく試してみよう、実際に体感してみてから感じたことを意見すればよいという含みを持たせた趣旨はありました。
「あんたらにはわからんだろ」とは申し上げておりません。
計算通り、理論通りに事が運ばない=理論値と感性は一致するとは限らないのだから、とにかく実際に試してみようという検証実験の提案し、実際に試乗して感じたことを記事にしたつもりです。
片側90g追加の試乗で分からなければ重量を追加してみてもいい。重さを減らしていってどこまで違いが分かるか、またどの程度の重量差なら分からなくなるのか試してもいい。
理論とフィーリングが一致するかどうかは、実際に試してみないと分からないものです。
「フレーム横剛性〇%向上、空気抵抗〇%削減、〇g軽量化」と宣伝された新型バイクを試乗もしないで語るつもりはありません。
これと同じことを言いたかったのです。
ディスカッション
コメント一覧
失礼ながら、慣性質量という言葉の意味を勘違いされているのではないでしょうか。「同じ重量を加えても慣性質量が異なります。」とありますが、同じです。
回転中心から位置が遠いため重く感じるという説明をされておられるので、慣性モーメントと混同されているのだと思います。回転に必要なエネルギーは慣性質量×半径の二乗(慣性モーメント)に比例しますので。
では、コラムから30cm位置のブラケットに左右合計200g、20cm位置のレックマウントに数百g…ここでは仮にライト/サイコン/マウント等400gがあるとします。
この場合、マウントを動かすのに必要エネルギーはブラケットの89%です。
ダンシング(接地点から90cm位置と80cm位置)の例では逆転して、必要エネルギーはブラケットの158%です。
どうでしょう?ご自分の説明内容は、ご自分の体感と一致していますか?していないのでは?
せっかく面白い実験をされておられるのに、ご自分でも意味を理解されていないであろう誤った説明を添えて台無しにしてしまうのは勿体ないと思います。
コメントありがとうございます。
ご指摘の通り回転運動に対する慣性なので、慣性質量は誤りで慣性モーメントが正しいです。
記事内にも訂正の旨記載させて頂き、ここに訂正させて頂きます。ありがとうございました。
例に挙げられたダンシングでの場合は、接地点(地面)からバイクが左右に振れる振り子運動が有るのと同時に
引き腕の力でステアリングが左右に切れる動きと、その動きをハンドルが切れすぎないように
固定するように引き腕を使っています。
接地面を支点にバイクを左右に振る慣性モーメントだけでなく、意図的でないにせよステアリング操作の慣性モーメントと
ステアリングが切れすぎないように固定する腕の力→
これは慣性モーメントではない、等が複合的に作用していますよね。
僕のバイクではコラム中心からSTIに取り付けたオモリまでの距離は31cm、ステム前方に取り付けたガーミン本体中央(重心と仮定)までの距離が21cmでした。
計算上では392gの重りをガーミンマウントに取り付ければ、この実験と等価になる計算にはなります。
RECマウント等のアウトフロントマウントを使っていない、ハンドルバーにマウントした場合は792gと、
かなりの重量を計算上では負荷しないと同等の条件にはならない計算です。
※ステム100mm、ハンドル幅芯々400mmです。
追記
ダンシング時にステアリングが必要以上に左右に切れるのを抑えているから、これも慣性モーメントでしょうか。
ダンシングでバイクが接地面を軸にする慣性モーメント、ステアリングが左右に切れる慣性モーメントそのものよりも、
その動きを『止めて戻す』モーメントの方が大きな力が必要で影響が大きく体感し易いことを再確認出来ました。
最後にこの記事の本題は、サイコン+ライトの荷重とSTIの重量増との比較ではありません。
卓上の計算と実際の体感では予想通りにならないこともしばしばあります。
あくまでSTIレバーの重量差を比較する試乗インプレッションです。
誰でも試せる実験方法を提案しているつもりです。
実際に試してご自身で感じてみることが重要だと考えています。
スペックを見ただけで試乗インプレッションを語ることはできませんから。